【終戦・被爆80年】ヒュンメルがピースユニフォームを作り続ける理由「平和は毎日必要なもの」“10年分”を1枚にしたデザイン発表

これまでの11種類(32パターン)に加えて、長崎で被爆した故・谷口稜曄さんと発表したピーススニーカーのデザインも取り入れた。

スポーツブランド・ヒュンメルは、サッカーのユニフォームを通じて、平和祈念や被爆について発信してきた。

2015年から長崎や広島のサッカークラブにピースユニフォームを提供。過去10年分のデザインをつなぎ合わせたマッシュアップユニフォームを、被爆80年の2025年に発表した。

これまでの11種類(32パターン)に加えて、長崎で被爆した故・谷口稜曄さんと発表したピーススニーカーのデザインも取り入れた。

10年分のピースユニフォームをマッシュアップしたユニフォーム
10年分のピースユニフォームをマッシュアップしたユニフォーム
ヒュンメル提供

ヒュンメルは「これからも平和の想いを繋いでいくという意思を込めて、左肩から右わきにかけてたすき掛けデザインのユニフォームに仕上げました」と説明。

広報担当者は、ピースユニフォームを作り続ける理由について「多くの人がスポーツやサッカーという日常的なものから、平和や、かつて・いまの戦争について考え行動するきっかけになれれば」とハフポスト日本版の取材に明かした。

どんなデザインなのか

ヒュンメルによると、今回つなぎ合わされた過去10年のデザインひとつひとつに、被爆や原爆、平和の表現が施されている。

例えば次のようなコンセプトだ。

・折り鶴を連ねた幾何学パターンと平和を象徴する鳩(2024年

・爆心地の地図と多くの人の命を奪った原子爆弾の閃光(2023年

・原爆の爆発後に降った、放射性物質を含む「黒い雨」を表現した太さの異なる斜線(2022年

・広島は午前8時15分、長崎は午前11時2分の被爆時間を示した時計(2022年)

・平和の象徴の鳩の羽とハート(2019年

・日本の伝統的な平和の象徴である「折り鶴」(2018年

どこで披露されてきたのか

最初のピースユニフォームは2015年。ヒュンメルが、当時ユニフォームのサプライヤー契約をしていたV・ファーレン長崎とともに発表し、夏のJリーグの試合で着用された。この取り組みは2019年まで毎年実施された。

2015年のピースユニフォームを着てプレーするV・ファーレン長崎の選手
2015年のピースユニフォームを着てプレーするV・ファーレン長崎の選手
ヒュンメル提供
2016年のピースユニフォームを着るV・ファーレン長崎の選手たち
2016年のピースユニフォームを着るV・ファーレン長崎の選手たち
ヒュンメル提供
2018年のV・ファーレン長崎のピースユニフォーム(右)
2018年のV・ファーレン長崎のピースユニフォーム(右)
ヒュンメル提供

2019年からは、長崎・広島のアンダー15世代が毎年8月に実施している親善試合「ピースマッチ」のユニフォームを提供している。2020年には広島文教大学附属高校とのピースユニフォームも発表した。

2025年のピースマッシュアップユニフォームは、ヒュンメルの公式オンラインストアで予約を受け付けている。売り上げの一部は、広島県サッカー協会に寄付し、2025年のピースマッチで実際される平和学習で活用される。

被爆2世で長崎原爆被災者協議会の事務局長を務める柿田富美枝さんは、次のようなコメントを寄せている。

「被爆80年、私たちはこれを機会に、今やれることをやらねばと話しています。谷口さんが『過去の苦しみが忘れ去られつつある平和な世の中で、私はその忘却を恐れます。そして明日の語り手にもなってくれる子どもたちに期待しています』と話されていたことを、改めて感じています」

「平和は毎年、毎日必要なもの」

ヒュンメルはこれまでも、スポーツを通じた平和の取り組みを世界各国で実施してきた。

ピースユニフォーム・マッチもその流れを汲んでおり、担当者は「日本での平和を推進する取り組みとして、日本での独自性や意味合いを出す意味でも最適でしたし、続けることでその価値を見出してきた部分もあります」と説明する。

2年目となる2016年のピースユニフォームをめぐって、次のようなやりとりもあったという。

「当時のインター(デンマーク本社)のマーケティング担当者と話していた中で、『今年はアニバーサリーイヤーじゃないのにするのか?』という質問を受けたことがあります。この時に『平和は毎年、毎日必要なものだから』と答えました」

日本では毎年、長崎と広島で平和祈念式典が開かれている。

「継続的に伝えていく場があることで、ニュースにもなり、当事者以外もその事実を知り、深く考えるきっかけにもなっているように思います」

ピースユニフォームも、サッカーを通じて「平和や、かつて・いまの戦争を考えるきっかけ」になることを目指している。

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