本発明では、前記有機半導体分子が末端に有する官能基が前記微粒子と化学結合し、前記有機半導体分子が両端に有する前記官能基によって、前記有機半導体分子と前記微粒子とが交互に結合し、前記微粒子内の導電路と前記有機半導体分子内の導電路とが二次元または三次元的に連結されたネットワーク型の導電路が形成されているのがよい。
これにより、前記導電路内の電荷移動が、有機半導体分子の主鎖に沿った分子の軸方向で支配的に起こる構造となり、分子の軸方向の移動度、例えば非局在化したπ電子による高い移動度を最大限に利用することができる。
これにより、単分子層トランジスタに匹敵する、今までにない高い移動度を実現できる有機半導体トランジスタが提供できる。
本発明では、前記導電路を有するチャネル領域を形成し、このチャネル領域の両側にソース及びドレイン電極を設け、これらの両電極間にゲート電極を設け、絶縁ゲート(例えばMOS:Metal Oxide Semiconductor)型電界効果トランジスタを構成するのがよい。この構造は、共役系をもつ有機半導体分子として可視部付近の光に対して光吸収性のある色素の使用により、光センサ等としても動作可能である。
この場合、前記電界効果トランジスタが有機材料からなるフレキシブルな基板上に形成されるのがよく、更に、前記ゲート電極上のゲート絶縁膜も有機材料からなるのがよい。
また、前記ソース及びドレイン電極が前記微粒子と同じ材料からなるのがよい。
本発明では、前記微粒子と前記有機半導体分子との結合体の単一層又は複数層によって前記導電路を形成するのがよい。
具体的には、この場合、前記微粒子の層を形成した後に前記有機半導体分子を接触させる工程を1回行うことによって前記結合体の単一層を形成し、又はこの工程を2回以上繰り返すことで複数層を形成する。
この場合、最初の前記微粒子の層は、前記微粒子と接着性の良い下地層の上に形成するのがよい。
前記下地層はシラノール誘導体、即ちシランカップリング剤からなることが好ましく、この場合、前記下地層を上記した前記ゲート電極上のゲート絶縁膜としても用いることができる。
これによれば、酸化膜などの前記ゲート絶縁膜を費用・時間のかかるプロセスにて形成する必要がなくなる。従って、トランジスタ全体の構成がより簡素なものとなり、製造プロセスの工程が減る。また、トランジスタ全体の厚みを薄く抑えることができ、更に、前記下地層からなる前記ゲート絶縁膜は、溶液による製造プロセスで作製することができるので、装置にかかる費用や作製に要する時間を低減することが可能になる。
前記ゲート電極を設けた前記基板と前記微粒子とを前記シランカップリング剤を介して化学的に結合させるには、前記シランカップリング剤は、一端に前記微粒子と反応するアミノ基やチオール基等の官能基を持ち、もう一端に前記基板上の水酸基と反応するアルコキシル基等を有することが重要である。
前記シランカップリング剤の具体例としては、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS、下記構造式(1))、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS、下記構造式(2))、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(APMDES、下記構造式(3))3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS、下記構造式(4))、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(MPMDMS、下記構造式(5))、メルカプトメチルジメチルエトキシシラン(MMDMES、下記構造式(6))、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン(MMMDES、下記構造式(7))、3−シアノプロピルジメチルメトキシシラン(CPDMMS、下記構造式(8))、3−シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTES、下記構造式(9))、2−ピリジルエチルトリメトキシシラン(PETMS、下記構造式(10))、2−(ジフェニルホスヒノ)エチルトリエトキシシラン(DPPETES、下記構造式(11))などを挙げることができる。ここで、分子中のアルキル鎖の長さを変えれば、上記のよく知られているシランカップリング剤だけでなく、新しい材料をその用途に従い合成することができる。
また、上記した一般的なシランカップリング剤だけが、本発明の用途に使えるわけではない。前記シランカップリング剤は、前記ゲート電極を設けた前記基板及び前記微粒子の両方に化学的に結合できればよく、両端にチオール基を持つジチオール系物質も使用可能と思われる。例えば、デカンジチオール(HS−C10H20−SH)等が挙げられる。
前記シランカップリング剤の基本的構造は、その多くが主鎖を定義できるような擬1次元様構造のものであるが、その限りではなく、2次元様又は3次元様の分子を用いたとしても、きちんと前記基板、前記微粒子のそれぞれに結合すべき要素部分が結合すればよい。但し、その際に前記微粒子からなるネットワーク構造によって形成されるトランジスタ特性が悪化、破壊するようであってはいけない。
また、前記下地層を前記ゲート絶縁膜としても用いる場合、前記シランカップリング剤は電気伝導性が悪いものでなくてはならない。従って、前記シランカップリング剤の主鎖がアルキル鎖であれば問題はないが、伝導性が良いと考えられる共役鎖を本発明の用途に使用するのは難しい。
さらに、前記シランカップリング剤に代えて、核酸(DNA)等も用いることができる。
本発明では、前記微粒子は、前記導体としての金、銀、白金、銅又はアルミニウム、或いは前記半導体としての硫化カドミウム、セレン化カドミウム又はシリコンからなる微粒子であることが好ましい。また、その粒子径は10nm以下であるのがよい。
ここで、前記微粒子の形状としては球形が挙げられるが、本発明はこれに限るものではなく、例えば球形の他に、三角形、立方体、直方体、円錐等が挙げられる。
また、前記微粒子が、1次元方向に異方性形状を持つ短径10nm以下のナノロッド(又はナノファイバー)(Ser-Sing Chang, Chao-Wen Shih, Cheng-Dah Chen, Wei-Cheng Lai, and C. R. Chris Wang,. “The Shape Transition of Gold Nanorods” Langmuir (1999), 15, 701-709を参照。)又はナノチューブであってもよい。この場合、上記した前記ソース及びドレイン電極間の距離が前記ナノロッドの長径より短いのが好ましい。
前記微粒子として前記ナノロッド又はナノチューブを用いれば、仮にある程度サイズ(長径・短径)にバラつきがある場合でも、球形のナノ粒子に比べてより規則正しく、平行に配置できる可能性が高い。
前記有機半導体分子は、共役結合を有する有機半導体分子であって、分子の両端にチオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)、イソシアノ基(−NC)、チオアセトキシル基(−SCOCH3)又はカルボキシル基(−COOH)を有する分子であるのがよい。例えば、下記構造式(12)の4,4’−ビフェニルジチオール(BPDT)、下記構造式(13)の4,4’−ジイソシアノビフェニル、下記構造式(14)の4,4’−ジイソシアノ−p−テルフェニル、及び下記構造式(15)の2,5−ビス(5’−チオアセトキシル−2’−チオフェニル)チオフェン、下記構造式(16)の4,4’−ジイソシアノフェニル等、或いはBovin Serum Albumin、Horse Redish Peroxidase、antibody-antigen等が挙げられる。これらはいずれも、π共役系分子であって、少なくとも2箇所で前記微粒子と化学的に結合する官能基を有しているのが好ましい。
また、前記有機半導体分子として、下記構造式(17)で表されるデンドリマー等も用いることができる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的に説明する。
[実施の形態1:MOS型電界効果トランジスタ]
図1は、実施の形態1によるMOS型電界効果トランジスタを例示する概略断面図(a)、要部拡大図(b)及び電荷移動のイメージ図(c)である。
図1(a)は、TFTとしてよく用いられるMOS型電界効果トランジスタのデバイス構造の1つであり、公知の技術で基板1の上にゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4、ドレイン電極5を先に形成しておき、その上に微粒子8と有機半導体分子9との結合体からなるチャネル層6を形成するものである。なお、ここでは、後述の分子はんだ層(前記下地層)は図示及び説明を省略している。
基板1としては、例えば、ポリイミドやポリカーボネートやポリエチレンテレフタラート(PET)などのプラスチック基板、ガラス、石英、又はシリコン基板等を用いる。プラスチック基板を用いると、例えば曲面形状をもつディスプレイのように、フレキシブルな形状の半導体装置を製造できる。
基板1上に形成されたトランジスタは、ディスプレイ装置として応用する場合のように、基板1ごと多数のトランジスタを集積したモノリシック集積回路として利用してもよいし、各トランジスタを切断して個別化し、ディスクリート部品として利用してもよい。
ゲート電極2の材料としては、例えば、導電性高分子、金(Au)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ポリシリコン等の導電性物質、又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。
ゲート絶縁膜3の材料としては、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、スピンオンガラス(SOG)、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、金属酸化物高誘電絶縁膜等、又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。
ソース電極4及びドレイン電極5の材料としては、例えば、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、導電性高分子等の導電性物質、又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。
本実施の形態によれば、作製工程における処理温度を200℃以下に抑えることができるので、上記の材料をすべて有機化合物で構成することもできる。
チャネル層6は、微粒子8と有機半導体分子9とがネットワーク状に結合された結合体で形成され、ゲート電極2のゲート電圧によってキャリア移動が制御される。
微粒子8は、粒子径10nm以下の微粒子で、その材料としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)等の導体や、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、シリコン(Si)等の半導体を用いることができる。
有機半導体分子9としては、分子骨格に共役結合を有する有機半導体分子であって、分子の末端に微粒子8と化学的に結合できる官能基、例えばチオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)、イソシアノ基(−NC)、チオアセトキシル基(−SCOCH3)、カシボキシル基(−COOH)等を有するものを用いる。チオール基、アミノ基、イソシアノ基及びチオアセトキシル基は、Au等の導体微粒子に結合する官能基であり、カシボキシル基は、半導体微粒子に結合する官能基である。
具体的には、有機半導体分子9として、例えば、下記構造式(12)の4,4’−ビフェニルジチオール、下記構造式(13)の4,4’−ジイソシアノビフェニル、下記構造式(14)の4,4’−ジイソシアノ−p−テルフェニル、下記構造式(15)の2,5−ビス(5’−チオアセトキシル−2’−チオフェニル)チオフェン、下記構造式(16)の4,4’−ジイソシアノフェニル等、或いはBovin Serum Albumin、Horse Redish Peroxidase、antibody-antigen等を挙げることができる。
また、有機半導体分子9として、下記構造式(17)で表されるデンドリマー等も用いることができる。
チャネル層6では、微粒子8が有機半導体分子9によって二次元または三次元的に結びつけられ、微粒子8内の導電路と有機半導体分子9内の分子骨格に沿った導電路とが連結したネットワーク型の導電路が形成されている。
図1(b)の拡大図に示すように、上記の導電路には、従来の有機半導体の低い移動度の原因であった分子間の電子移動が含まれず、しかも、分子内の電子移動は、分子骨格に沿って形成された共役系を通じて行われるので、高い移動度が期待される。
チャネル層6における電子伝導は、図1(c)に示すようにネットワーク型の導電路10を通って行われ、チャネル層6の導電性はゲート電極2に印加する電圧によって制御される。
基板1上のチャネル層6を作製する領域の表面には、微粒子8を1層分だけ固定するための接着材として働く前記下地層としての分子はんだ層(図示していない)が設けられている。はんだの役割を担う分子としては、シラン系の化合物であって、前記ゲート電極を設けた前記基板及び前記微粒子の両方に化学的に結合できる官能基を有する分子を用いる。
例えば、微粒子8とソース電極4及びドレイン電極5とが金でできている場合には、金に対して親和性のあるアミノ基やチオール基を有する(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)やメルカプト系シランを用いる。
チャネル層6の形成工程では、微粒子8の層を1層形成した後に、微粒子8に有機半導体分子9を接触させ、微粒子8と有機半導体分子9との結合体を形成させることにより、結合体の層が1層分形成される。このようにしてチャネル層6は、1層ずつ形成されるので、この工程を何回繰り返すかで、所望の厚さをもつチャネル層6を形成することができる。
チャネル層6は、単一層であってもかまわないが、通常2層以上、10層位が良い。1層の厚さは微粒子8の粒径(数nm)と大きく変わらない。微粒子8が金からなる微粒子で粒径が10nmほどであるとし、10層積層するものとすると、チャネル層6の厚さは、おおよそ100nmとなる。したがって、ソース電極4及びドレイン電極5の厚さも100nm以上の厚さにするのがよい。
チャネル層6は、1層ずつ独立に形成されるので、各結合体層ごと又は複数の結合体層ごとに、微粒子8を構成する材料や微粒子8の粒子径又は有機半導体分子9を変えて、チャネル層の特性をコントロールしてもよい。
MOS型電界効果トランジスタには、図1(a)以外にも色々な構造が考えられ、どのタイプの構造であってもよい。先にチャネル層6を形成しておき、その上にソース電極4とドレイン電極5を蒸着等で形成することも可能で、その場合の構造は、例えば図2(a)のトップゲート型又は図2(b)のボトムゲート型になる。また、図2(c)のデュアルゲート型とすることも可能で、その場合には、より有効にチャネル層6の導電性を制御することができる。
[実施の形態2:MOS型トランジスタの作製]
以下、図3と図4とを用いて、図1(a)に示した実施の形態1のMOS型電界効果トランジスタの作製工程を説明する。ここでは、各電極2、4、5と微粒子8の材料として金を用い、有機半導体分子9として4,4’−ビフェニルジチオールを用い、はんだ分子(シランカップリング剤)7として(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)を用いることにする。
初めに、公知の方法を用いて、基板1の上にゲート電極2、ゲート絶縁膜3、ソース電極4及びドレイン電極5を形成する。
工程1
基板1としては、例えば、ポリイミドやポリカーボネートなどのプラスチック基板、ガラス、石英、又はシリコン基板等を用いる。
基板1上に、他の部分をマスクしながら金(Au)を蒸着して、ゲート電極2を形成する。ゲート電極2の材料としては、金(Au)以外に、例えば、導電性高分子、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等の導電性物質、又はこれらを組み合わせたものを用いることができ、リフトオフ法、シャドウマスク法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等で形成する。
工程2
続いて、ゲート絶縁膜3をスピンコーティング法、スパッタ法、浸漬法、キャスティング法等により形成する。ゲート絶縁膜3の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、スピンオンガラス(SOG)、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、金属酸化物高誘電絶縁膜等、又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。
工程3
上記ゲート絶縁膜3の上に、他の部分をマスクしながら金(Au)を蒸着して、ソース電極4とドレイン電極5とを形成する。ソース電極4及びドレイン電極5の材料としては、金(Au)以外に、例えば、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、導電性高分子等の導電性物質、又はこれらを組み合わせたものを用いることができ、リフトオフ法、シャドウマスク法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等で形成する。
次に、三次元的なネットワーク構造で互いに結ばれた微粒子8と有機半導体分子9とからなるチャネル層6を形成する。
工程4
まず、チャネル層6を作製する領域の表面を、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン(APTMS)をトルエン又はヘキサンに溶解した体積濃度数%の溶液に浸漬し、その後、トルエン又はヘキサンで洗浄して溶液を置換してから溶媒を蒸発させて、金微粒子8を1層分だけ固定する前記下地層としての分子はんだ層7を形成する。APTMSの代わりに例えばメルカプト系シランを用いてもよい。
工程5
次に、金微粒子8をトルエンやクロロフォルム等の溶媒に分散させた分散液(濃度数mM)に、分子はんだ層7を形成した基板21を数分〜数時間浸漬し、その後、溶媒を蒸発させる。これにより、分子はんだ層7の表面に金微粒子8が固定され、金微粒子8からなる金微粒子層8aが分子はんだ層7の上に形成される。
分子はんだ層7は、金微粒子8と化学結合可能なアミノ基等の官能基を有していて、この官能基と結合する1層分の金微粒子層8aだけが、分子はんだ層7上に固定される。分子はんだ層7に固定されていない余剰の金微粒子8は洗浄して洗い流す。
工程6
続いて、4,4’−ビフェニルジチオール9をトルエンに溶解したモル濃度数mM以下の溶液に基板1を浸漬した後、トルエンで洗浄して溶液を置換し、その後、溶媒を蒸発させる。この時、4,4’−ビフェニルジチオール9は、分子の末端にあるチオール基の反応を通して金微粒子8の表面に結合する。1個の金微粒子8の表面には、多数の4,4’−ビフェニルジチオール分子9が金微粒子8を包み込むように結合する。それらのうちの一部が、もう一方の分子末端にあるチオール基の反応を通して他の金微粒子8とも結合するため、4,4’−ビフェニルジチオール分子9によって金微粒子8が二次元ネットワーク状に連結された1層目の結合体層6aが形成される。
この結合体層6aの表面には、4,4’−ビフェニルジチオール9の未反応のチオール基が多数残っているので、結合体層6aの表面は、金微粒子9に対して強い結合力を有している。
工程7
次に、上記の基板1を工程5と同様に、金微粒子8をトルエンやクロロフォルム等の溶媒に分散させた分散液に数分〜数時間浸漬し、その後、溶媒を蒸発させる。これにより、1層目の結合体層6aの表面に金微粒子8が結合して固定され、2層目の金微粒子層8bが形成される。
ここでは2層目の金微粒子8は、4,4’−ビフェニルジチオール9によって1層目の金微粒子8と連結されると共に、同じ2層目の金微粒子8と連結した1層目の金微粒子8同士は、この2層目の金微粒子8を介して間接的に連結されることになり、連結は三次元的なものになる。
工程8
続いて、上記の基板1を工程6と同様に、4,4’−ビフェニルジチオール9をトルエンに溶解したモル濃度数mM以下の溶液に基板1を浸漬した後、トルエンで洗浄して溶液を置換し、その後、溶媒を蒸発させる。工程6と同様に、金微粒子8を包み込むように多数の4,4’−ビフェニルジチオール9が結合し、4,4’−ビフェニルジチオール分子9によって金微粒子8が連結された2層目の結合体層6bが形成される。
工程9
この後、工程7と工程8とを繰り返し行うことで、三次元的なネットワーク型の導電路が形成されたチャネル層を、1層ずつ形成することができる。この繰り返しの回数を適切に選ぶことで、所望の厚さのチャネル層6を形成することができる(M. D. Musickら, Chem. Mater. (1997), 9, 1499; Chem. Mater. (2000), 12, 2869 参照)。
なお、図3、図4は、各結合体層を同一材料で形成しているが、各結合体層ごと又は複数の結合体層ごとに、微粒子8を構成する材料や微粒子8の粒子径又は有機半導体分子9を変えて、チャネル層の特性をコントロールしてもよい。また、ソース電極4及びドレイン電極5の上部にもチャネル層6を形成しているが、両電極間に挟まれた凹部にのみチャネル層6を形成してもよい。
また、予めチャネル層だけを別に形成しておき、これを基板1やゲート絶縁膜3に付着させ、図2(a)又は(b)の構造の電界効果トランジスタを作製することもできる。
[実施の形態3]
上記の実施の形態1〜2は、前記微粒子として金等のナノ粒子を用いており、如何にこの微粒子を基板上に規則正しく付着し、一定の長さを持つ前記有機半導体分子で橋渡しをするかが重要である。
ナノメートルサイズの粒子は数百から数千の金属原子がクラスター化したものであり、正確には多面体であるが、近似的に球形と考えるのが普通である。ナノ粒子は、その原料の違いにより、径の分布幅が異なるものができる。分布幅が狭いというのは、言い換えると粒子の径が良く揃っているということであり、これを用いて2次元ネットワークを構築すれば、きれいに最密充填様に揃う。逆に、粒子径が不揃いであると、規則的な2次元ネットワークを形成し難い。
以下に、金のナノ粒子の径のばらつきが、基板上に粒子を結合したときに如何に影響するかを示す。
図5に本発明に基づく半導体装置としての有機半導体トランジスタの模式図を示すように、マクロな大きさのソース電極4及びドレイン電極5間のゲート絶縁膜3が顕わになっているスペースに、ナノ粒子(例えば金微粒子)8が規則的に結合し、またこのナノ粒子8に有機半導体分子9が結合している。ここで、ナノ粒子8の表面は鎖状の絶縁性有機分子からなる保護膜によってコーティングされているため、ナノ粒子8同士は凝集しない。
前記絶縁性有機分子は、核の部分に当たる金属クラスター(前記ナノ粒子)に対して結合しているが、その結合力の大小が前記ナノ粒子を合成する際の最終的な径分布に大きく影響している。
前記絶縁性有機分子の一端には、前記ナノ粒子と化学的に反応(結合)する官能基を持たせる。例えば、前記官能基としてチオール基(−SH)を挙げることができ、このチオール基を末端に持つ分子の一つとしてドデカンチオール(C12H25SH)を挙げることができる。前記チオール基が金等の前記ナノ粒子と結合すると、水素原子がはずれてC12H25S−Auとなると言われている。
図6は、前記保護膜としてドデカンチオールを用い、実際に合成した金ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図6より明らかなように、金ナノ粒子の径の大きさが非常に良く揃っているのが分かる。(なお、チオール基を有する前記絶縁性有機分子を前記保護膜とした金ナノ粒子の作製については、文献Mathias Brust, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 801 (1994)を参照。)
一方、前記ナノ粒子と化学的に反応(結合)する前記官能基としてアミノ基も挙げることができる。図7は、前記保護膜としてこのアミノ基を末端官能基として有する前記絶縁性有機分子を用い、実際に合成した金ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図7より明らかなように、金ナノ粒子の径の大きさが、図6のチオール基の場合よりも大きいことが分かる。(なお、アミノ基を有する前記絶縁性有機分子を前記保護膜とした金ナノ粒子の作製については、文献Daniel V. Leff, et al., Langmuir 12, 4723 (1996)を参照。)
「チオール基−金」の結合の方が「アミノ基−金」のそれよりも強いことが一般的に知られている。前記保護膜としてアミノ基を有する前記絶縁性有機分子を用い、金ナノ粒子を合成する場合、一般的な傾向として「アミノ基−金」の結合の弱さから、前記絶縁性有機分子がナノ粒子(金原子)を完全に包み込む前に、他のナノ粒子(金原子)と凝集する可能性があり、その結果、大きな粒径の粒子が形成され易いと考えられる。また、アミノ基の場合、ナノ粒子が前記保護膜で包み込まれた後も、ナノ粒子同士が接合しているように見えるものが少なからず存在する。
実際に、チオール基又はアミノ基を有する前記絶縁性有機分子を用いて合成された金ナノ粒子の径分布をそれぞれ、小角エックス線散乱(透過型)で測定・解析した結果を図8に示す。図8より明らかなように、チオール基で保護されている金ナノ粒子の粒径の方がアミノ基よりも小さく、また径の分布の度合いも小さいのが分かる。この結果は、図6と図7で見られたものをよく反映しているものと思われる。
次に、基板上に上記のようなナノ粒子を付着した時、粒径が揃っているナノ粒子と揃っていないナノ粒子とではどのような違いが起きるかを示す。
図9は、アミノ基を有する前記絶縁性有機分子からなる前記保護膜を表面に有する金ナノ粒子が、基板上に単層付着されたときの走査電子顕微鏡写真である。金ナノ粒子の付着プロセスが最適化できていないこともあるが、粒子が詰まっている部分に着目すると、規則正しく配置されているというよりは、サイズの不揃いな粒子が不規則に密集して配置されている。
図10は、チオール基を有する前記絶縁性有機分子からなる前記保護膜を表面に有し、粒径が非常に揃っている金ナノ粒子が、基板上に単層付着されたときの透過電子顕微鏡写真である(なお、この透過電子顕微鏡写真は、アメリカのPurdue大学のAndres教授らの研究による。(文献R. P. Andres, et al. J. Vac. Sci. Technol. A 14, 1178 (1996)のFIG.1を参照。))。図10によれば、数個の欠陥を除いて、非常に規則正しく、最密充填を成して金ナノ粒子が付着しているのが分かる。
以上より、径の揃っていないナノ粒子を用いて、規則的な2次元配列を作り出すのは容易ではないように思われる。
従って、本実施の形態では、擬ゼロ次元形状のナノ粒子の代わりに、より1次元的形状を持つ金等のナノロッド(又はナノチューブ)を前記微粒子として使用する。これにより、仮にある程度サイズ(長径・短径)にばらつきがある場合でも、球形のナノ粒子に比べてより規則正しく、平行に配置できる可能性が高い。また、短径にバラつきがある場合でも、一本のナノロッドに注目したとき、ナノロッド間で短径のばらつきがあってもそれらを並べる場合は平行に揃い易い。
前記微粒子として前記ナノロッドを用いた場合も、上記したと同様にしてナノロッド間を前記有機半導体分子で橋渡しさせることにより、トランジスタを形成することができる。ある一つの前記有機半導体分子を用いるということは、ある一定の長さがナノロッド(又はナノ粒子)間に必要ということであり、ロッド(粒子)の規則正しい配置はとても重要であるということが容易に分かる。
前記ナノロッドの合成自体はこれまでに行われており、短径でみると10nm弱という小さいものを初めとして、長径方向は数十nmのものから、長いものでは500nmを超えるようなサブミクロンサイズのものまで合成されている。また、アスペクト比でいうと20に近く、非常に一次元的なロッドまで合成が可能である(文献Ser-Sing Chang, et al., Langmuir 15, 701 (1999)、Hiroshi Yao, et al., Chemistry Letters, 458 (2002)を参照。)。
前記ナノロッドにおいて、臭化セチル・トリメチル・アンモニウムに代表されるような臭化アンモニウム系分子が、その保護膜として用いられている。これらは水溶性電解質の中で電気化学的に作られる。従って、ここで保護膜として呼んでいるものは、一般的な「界面活性剤」というものである。臭化セチル・トリメチル・アンモニウムは「陽イオン界面活性剤」であるため、陰イオンの臭素が金等のナノロッドに面することになる。即ち、金等の前記ナノロッドは、界面活性剤ミセル内にできる。
金等の前記ナノロッドを基板上に結合させたという前例はないが、径観察のために透過電子顕微鏡の観測グリッド上に金ナノロッド溶液をたらし、溶媒を蒸発させる簡単なプロセスでは既に、ロッドの多くが規則正しく並ぶことが報告されている。図11は、その透過電子顕微鏡写真である(Ser-Sing Chang, et al., Langmuir 15, 701 (1999))。なお、図11の金ナノロッドのアスペクト比は6:1であり、短径10.6nm、長径62.6nmである。
これは有機半導体トランジスタの作製において、前記微粒子として前記ナノ粒子に代わり前記ナノロッドを用いることができることを示唆している。前記ナノロッドを基板に結合させるプロセスを最適化する道のりも、前記ナノ粒子の場合に比べて、余り険しくないことが予想される。
この場合、トランジスタ構造における前記ソース電極及びドレイン電極間の距離が前記ナノロッドの長径より短いことが好ましい。
この場合、予め平行電極(ソース及びドレイン電極)をナノロッドの長径より電極間の距離が短くなるように形成した基板をナノロッド溶液中に浸漬し、ナノロッドを基板上に結合させる。電極間をナノロッドの長径よりも短くすることにより、前記平行電極間のゲート絶縁膜上には、前記ナノロッドが前記電極に対して平行に位置したときのみ入り込めることになる。
図12(a)は、トランジスタ構造におけるソース電極4及びドレイン電極5間の距離をナノロッド14の長径より短く形成し、ナノロッド14が電極4、5に対して大きな角度を成した場合の概念図である。この場合、何らかの外的刺激(例えば、ナノロッド溶液中に基板を浸漬させているときに、ナノロッド溶液の容器を揺する等が考えられる。)を与えるとナノロッド14が角度を変え、図12(b)に示すように、電極4、5間にナノロッド14が収まると考えられる。また、前記外的刺激を与えても電極4、5間に収まらないナノロッド14は、基板をナノロッド溶液から取り出した後、溶媒等で洗い流せば取り除くことができる。
このとき、電極4、5間に収まったナノロッド14が除去されるのを防ぐため、例えば電極4、5間の基板上に予めシランカップリング剤を塗布し、このシランカップリング剤上にナノロッド14を形成すればよい。
図13(c)は、ナノロッド14の一次元性を利用して、電極4、5間にナノロッド14の複数個を平行に配置したときの概念図である。
そして、基板上にナノロッド14を形成した後は、上述したと同様に、ナノロッド14に前記有機半導体分子を結合してチャネル層を形成し、トランジスタを構築させればよい。
この場合、前記チャネル層は、単一層であってもかまわないが、通常2層以上、10層位が良い。1層の厚さは前記ナノロッドの短径(10nm以下)と大きく変わらない。前記微粒子が金からなるナノロッドで粒径が10nmほどであるとし、10層積層するものとすると、前記チャネル層の厚さは、おおよそ100nmとなる。従って、前記ソース電極及びドレイン電極の厚さも100nm以上の厚さにするのがよい。
ここで、Ser-Sing Changらの研究によると(Ser-Sing Chang, et al., Langmuir 15, 701 (1999))、ミセルに囲まれている金ナノロッドにチオール基を反応させることが可能であると報告されている。彼らはメルカプトプロピルトリメトキシシランを用いた。チオール基が金に対して結合するので、この場合はメトキシ基が外に向かうことになる。有機半導体トランジスタを作製する際には、例えば前記有機半導体分子としてジチオール系共役系有機半導体分子などを用いれば、ミセルに囲まれた金ナノロッド間を橋渡しさせることが可能になるであろう。
[実施の形態4]
上述した他の実施の形態において、前記チャネル層は、前記有機半導体分子と前記微粒子とからなる材料で構成される。前記有機半導体分子は、終端に前記微粒子と化学的に結合できる基を有する。そして、前記有機半導体分子と前記微粒子とが交互に結合する構造を形成し、ネットワークを形成する。また、前記有機半導体分子と前記微粒子とでネットワーク形成された材料をチャネル材料として、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型FET(Field Effect Transistor)を形成することができる。
一般的に、通常のシリコンを基としたトランジスタで用いられているゲート絶縁膜は酸化シリコン(SiO2)である。その製造方法としては、通常、シリコン基板を高温で処理する熱酸化法が用いられる。
昨今注目を集めている半導体有機物をチャネル層に用いた「有機トランジスタ」において、有機物という特色を生かした溶液による製造プロセスが、工業的見地から見ても有望視されている。これまでのシリコンによるトランジスタは、真空・高温・リソグラフィー等をそのプロセスにおいて必要とし、時間、エネルギー及びコストが非常にかかる。また、微細化がますます進んできている現在では、より小さな構造を持つトランジスタを開発するには、これまでの何倍もの投資が必要になり、その増加率は指数関数的に増加していると言われている。
一方、多くの有機物は溶媒に溶けるので、溶液による製造プロセスを用いてトランジスタを作製する技術が注目を集めている。具体的な方法としては、溶液中に基板を浸漬する方法、溶液を基板上にスポイトなどで塗布し、スピンコーターなどで薄膜化する方法、インクジェットプリンターなどの印刷技術を使って薄膜を形成する方法などが挙げられる。このようなプロセス技術を用いれば、大きな面積に対して一度に形成することが可能になり、真空・高温などが要らないことから装置も大掛かりなものが必要とされず、コストも低く抑えることが可能になるため、将来のトランジスタ製造方法として大きな期待がかかっている。
従って、理想的には、基板、電極、絶縁層及び半導体チャネル層の全てを有機物で形成することができれば、より良いと思われる。しかしながら、現状では「有機トランジスタ」と言っても、その大部分はトランジスタのチャネル層のみを有機物で置き換えたものが殆どであり(即ち、ゲート絶縁膜はSiO2、基板はシリコン等で構成されている)、またその製膜法も従来の真空蒸着法が用いられる場合が多いなど、有機物としての特色を生かしていない場合が多い。
そこで、本実施の形態では、前記微粒子と接着性の良い前記下地層(上記した分子はんだ層)の上に前記微粒子の層を形成し、前記下地層としてシラノール誘導体、具体的にはシランカップリング剤を用いる。この場合、前記下地層は、トランジスタのチャネル層を構成する前記微粒子を固定するだけでなく、同時にゲート絶縁膜としても用いることができる。
具体的には、上述した他の実施の形態では、図14(a)に示すように、シリコン等の基板1上に、ゲート絶縁膜3が形成され、更にゲート絶縁膜3とチャネル層6との接着性を促進するための分子はんだ層(前記下地層)7がゲート絶縁膜3上に形成されている。
これに対し、本実施の形態は、図14(b)に示すように、シリコン等の基板1上に、シランカップリング剤からなる分子はんだ層(前記下地層)7が形成され、この分子はんだ層7上に、チャネル層6が形成されている。分子はんだ層7は、その両側で基板1及びチャネル層6とそれぞれ化学的に結合している。即ち、分子はんだ層7を形成しているシランカップリング剤は、チャネル層6側には、前記微粒子(例えば金)と反応するアミノ基やチオール基などの官能基を有し、一方、基板1側には、基板1及びゲート電極(図示省略)を構成する材料に対応した適当な官能基を有する。
これによれば、酸化膜などの前記ゲート絶縁膜を費用、時間のかかるプロセスにて形成する必要がなくなる。従って、トランジスタ全体の構成がより簡素なものとなり、製造プロセスの工程が減る。また、トランジスタ全体の厚みを薄く抑えることができ、更に、分子はんだ層7からなるゲート絶縁膜は、溶液による製造プロセスで作製することができるので、装置にかかる費用や作製に要する時間を低減することが可能になる。
前記シランカップリング剤の具体例としては、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS、下記構造式(1))、N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS、下記構造式(2))、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(APMDES、下記構造式(3))3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS、下記構造式(4))、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(MPMDMS、下記構造式(5))、メルカプトメチルジメチルエトキシシラン(MMDMES、下記構造式(6))、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン(MMMDES、下記構造式(7))、3−シアノプロピルジメチルメトキシシラン(CPDMMS、下記構造式(8))、3−シアノプロピルトリエトキシシラン(CPTES、下記構造式(9))、2−ピリジルエチルトリメトキシシラン(PETMS、下記構造式(10))、2−(ジフェニルホスヒノ)エチルトリエトキシシラン(DPPETES、下記構造式(11))などを挙げることができる。ここで、分子中のアルキル鎖の長さを変えれば、上記のよく知られているシランカップリング剤だけでなく、新しい材料をその用途に従い合成することができる。
また、上記した一般的なシランカップリング剤だけが、本発明の用途に使えるわけではない。前記分子はんだ層は、前記ゲート電極を設けた前記基板及び前記微粒子の両方に化学的に結合できればよく、両端にチオール基を持つジチオール系物質も使用可能と思われる。例えば、デカンジチオール(HS−C10H20−SH)等が挙げられる。
前記シランカップリング剤の基本的構造は、その多くが主鎖を定義できるような擬1次元様構造のものであるが、その限りではなく、2次元様又は3次元様の分子を用いたとしても、きちんと前記ゲート電極(又は前記基板)、前記微粒子のそれぞれに結合すべき要素部分が結合すればよい。但し、その際に前記微粒子からなるネットワーク構造によって形成されるトランジスタ特性が悪化、破壊するようであってはいけない。
また、前記下地層を前記ゲート絶縁膜としても用いる場合、前記シランカップリング剤は電気伝導性が悪いものでなくてはならない。従って、前記シランカップリング剤の主鎖がアルキル鎖であれば問題はないが、伝導性が良いと考えられる共役鎖を本発明の用途に使用するのは難しい。
さらに、前記シランカップリング剤に代えて、核酸(DNA)等も用いることができる。
本実施の形態における「基板−シランカップリング剤からなる分子はんだ層(下地層)−チャネル層」という構成自体は全く新しいというわけではなく、それに近い研究が近年なされている。2000年にフランスのグループが報告したところによると(J. Collet, et al., Applied Physics Letters, vol. 76, pages 1339-1341 (2000))、基板上にシランカップリング剤であるテトラデシル−1−エニルトリクロロシランからなる層を単層で形成し、その上端のビニル基を酸化して−COOHに変える。このような単層膜の上に、−COOHと反応する別の有機単層膜(π共役系)を形成する。シランカップリング剤は非共役系(σ系)であるので、ここに基板−σ系シランカップリング剤単層膜−π系単層膜の系ができることになる。しかしながら、彼らは、本実施の形態のようにトランジスタを作製したわけではなく、上記のように構成した薄膜の異方性伝導を調べたにとどまった。
また、上記した文献に対し、本発明は、トランジスタの前記チャネル層において、実際にキャリアが流れトランジスタ動作のもととなる部分は、前記微粒子を橋渡ししている共役系分子(前記有機半導体分子)である。本実施の形態は、「基板−分子はんだ層(下地層)−チャネル層」という構成であるが、前記分子はんだ層を構成するシランカップリング剤はチャネル層内の(金)粒子に結合するのであり、前記微粒子間をブリッジしている半導体共役系分子(前記有機半導体分子)に結合するわけではない。
以下に、シランカップリング剤が前記微粒子(ここでは金)をいかに強く結び付けておけるかを具体的に示す。
図15は、SiO2/Si基板(Si基板の表面に自然酸化膜SiO2が形成された基板)上に金微粒子を塗布し、その後、基板表面をトルエンで洗浄したときの透過電子顕微鏡写真である。なお、図15において、白い点が金微粒子であり、背景はSiO2/Si基板である。この場合、前記微粒子は、前記基板に物理的に弱く吸着しているだけなので、トルエンでの洗浄後、殆どの微粒子が取れてしまうことが分かる。
図16は、SiO2/Si基板(Si基板の表面に自然酸化膜SiO2が形成された基板)上に、前記シランカップリング剤としてのAEAPTMS(N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)の薄膜を形成し、更にこの薄膜上に金微粒子を塗布し、その後、基板表面をトルエンで洗浄したときの透過電子顕微鏡写真である。なお、図16において、白い点が金微粒子であり、背景はSiO2/Si基板である。
図16より明らかなように、前記下地層としてのAEAPTMS(N−2(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)薄膜を形成した後に金微粒子を塗布した場合、前記微粒子はトルエンですすいでも欠落することはない。即ち、前記微粒子はAEAPTMSにより基板に固定されている。
化学的に説明すると、AEAPTMSはまず基板(但し、予め表面が洗浄され、水酸基が表面を満たしている)に対して、アルコキシル基(Si−OR、OR=メトキシ基、エトキシ基)が加水分解によりシラノール基になり、それが基板上の水酸基と縮合反応することにより、基板と化学的に結びつく。また、鎖状の形状を有するAEAPTMSの基板側でない方の端には、アミノ基を有しており、これは金等の前記微粒子と結合する。これにより、AEAPTMSを介して前記基板と前記微粒子とが化学的に結合することができ、トルエンで洗浄する程度ではその結合は壊れない。
ここで、本実施の形態では、前記シランカップリング剤による層をそのままゲート絶縁層として使用するので、従来のような酸化シリコンなどのゲート絶縁膜が要らなくなる。従って、全体として、トランジスタをより薄くすることができる。また、有機トランジスタにおいて、より多くの構成要素を有機物で置き換えたいという要望を満たすものである。
有機トランジスタの全ての構成要素が有機物によって構成されれば、その製造にかかる費用・時間は大変小さなものとなると考えられる。例えば、オランダのフィリップスの研究所による報告によると、彼らはチャネル層だけでなく電極やゲート絶縁膜まで、トランジスタの全てを有機物(ポリマー)で作製することに成功している(文献M. Matters, et al., Optical Materials, vol. 12, pages 189-197 (1997)、G. H. Gelinck, et al., Applied Physics Letters, vol. 77, pages 14871489 (2000)を参照。)。報告されている材料例として、基板にはpolyimideやpolyethylene terephthalate(PET)が用いられ、電極にはpolyaniline、ゲート絶縁膜にはフォトレジストやpolyvinylphenol(PVP)などが用いられている。
前記微粒子を規則正しく(即ち、最密充填のように)配置し、2次元ネットワークを組むためには、その土台となる前記微粒子と化学結合する前記シランカップリング剤の末端官能基自体が規則正しく配列していなくてはならない。このためには、シランカップリング剤を単分子層で形成することが必要である。通常に塗布すると複層に形成されるため、溶剤内(例えばヘキサン)ですすいで、化学結合している最下層以外の分子を取り除くことが好ましい。
ここで、単分子層というナノオーダーの非常に薄い膜が、実際に前記ゲート絶縁膜としての機能(例えばリーク電流が十分小さいこと等)を果たすかどうかが心配な点であると思われるが、これはVullaumeらの研究により心配は払拭されている(文献D. Vullaume, et al., Applied Physics Letters, vol. 69, pages 1646-1648 (1996)を参照。)。彼らは、シランカップリング剤による単分子層が、それと同じ厚さの酸化シリコンと比べてもリーク電流が4〜5桁も低くなることを報告している。ここで試された有機薄膜の厚みは1.9nm〜2.6nmの3種類であり、これらはアルキル鎖の長さがそれぞれ違う。このように、分子のアルキル鎖部分の長さを変化させることによって、トランジスタの物理的な厚み及びゲート絶縁層としての特性を変化させることができると考えられる。
以上より、シランカップリング剤からなる層を前記ゲート絶縁膜として用いることは、前記チャネル層を形成する前記微粒子を化学的に固定するだけでなく、ゲート絶縁膜としても十分な特性を発揮できるものと思われる。
[基板(ゲート電極)について(1)]
シランカップリング剤による薄膜層をゲート絶縁膜としても用いる場合、絶縁膜はゲート電極に隣接していなくてはならないので、ゲート電極が同時に基板であると都合がよい。実際の例として最も典型的なものは、ドーピングされたシリコン基板である(なお、シリコン基板表面には別のプロセスで時間とお金をかけなくとも、通常、表面に非常に薄く自然酸化膜が付いている)。これは、ドーピングされているために低抵抗状態にあり、(ゲート)電極として用いることができる。
この基板を、高温(例えば60〜110℃)に温めたピランハ溶液(硫酸と過酸化水素水溶液(30%)を体積比で3:1に混合したもの)に浸漬させることにより(20分以上漬けておくのが通常)、表面に付着している有機不純物を取り除くと同時に、基板表面を水酸基化することができる。このピランハ溶液による処理のほかに、酸素プラズマアッシャー装置による処理も実効的に同じ効果が得られる。例えば、この基板に対しては、通常のアルコキシル基を末端に持つシランカップリング剤が適当である。
[基板(ゲート電極)について(2)]
ゲート電極基板として金板(厚さは問わない)を使用することも可能である。この場合、チオール基は金と化学的に強く結合するので、ゲート絶縁膜としても機能するシランカップリング剤としては、ジチオールなどが好適に用いられる。
[金微粒子について]
本実施の形態においては、前記微粒子としては、上述したと同様に粒子径は10nm以下であるのがよい。このように大きさがナノオーダーの微粒子は、化学的に比較的容易に合成が可能であることが知られている。ナノ粒子は単独では凝集化してしまうため、熱的に安定ではない。このため、それぞれのナノ粒子をチオール基やアミノ基を一方の端に持つ鎖状有機分子で保護しなくてはならない。但し、前記鎖状有機分子は上記のシランカップリング剤とは異なり、他方の端は、例えばメチル基などで終端されている。金等の前記微粒子に対して外側を向いている、前記他方の端もチオール基である場合には、ナノ粒子同士が凝集し易くなると考えられる。
[実施の形態5]
導体または半導体からなる前記微粒子と、この微粒子と化学結合した前記有機半導体分子とによって前記導電路が形成され、この導電路の導電性が電界によって制御されるように構成された半導体装置である電界効果トランジスタの製造方法の他の例を以下に説明する。
1.基板表面の改質
基板表面をシランカップリング剤が結合し易いように改質する。例えば、硫酸と過酸化水素水からなるピランハ溶液中に基板を浸漬させたり、基板表面に酸素プラズマやオゾンを照射する等の方法によって、基板表面を水酸基化すること等が有効である。
但し、前記基板として絶縁膜を設けたシリコン基板に代わり、プラスチック基板を用いる場合には、前記ピランハ溶液を用いると基板表面が酸で溶け易いので、酸素プラズマやオゾン照射によって、基板表面を改質するのが良い。
2.シランカップリング剤の基板表面への結合
上記のようにして表面を水酸基化した基板の表面に、シランカップリング剤を付着させ、シランカップリング剤からなる薄膜を形成する。
シランカップリング剤はケイ素(Si)と有機物からなる物質であり、一般に反応性の異なる2種類の官能基を持ち、一方の官能基はアルコキシ基(−OR(Rはアルキル鎖))のような加水分解性を有しかつ無機物質と反応し易く、他方の官能基はチオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)のような有機物質と反応し易く、無機物質と有機物質を結合する役割を果たす。シランカップリング剤中の前記微粒子と化学結合する反応基(−SiOR)は、水分による加水分解によりシラノール化(−SiOH)され、部分的に脱水縮合反応をしてオリゴマーになっている。この際、水分は大気中のものであったり、意図的に水に溶かす場合もある。このシラノール基と基板表面の水酸基とが水素結合的に吸着し易くなっており、これにより、基板にシランカップリング剤を付着することができる。
具体的には、シランカップリング剤を適当な溶媒で希釈した溶液中に基板を浸漬することで、基板表面にシランカップリング剤を付着することができる。また、浸漬とは全く別の方法として蒸気を用いる方法がある。例えば、シランカップリング剤の希釈溶液若しくはシランカップリング剤原液を密閉容器中に入れ、その容器中に基板を配置し、上記のシランカップリング剤の希釈溶液若しくはシランカップリング剤原液の蒸気を用いることにより、前記基板表面にシランカップリング剤を付着することができる。
次いで、基板表面とシランカップリング剤からなる薄膜表面との結合を強くするための脱水縮合、及び前記薄膜内の分子同士の結合を強くするための脱水縮合などを行う。なお、前記脱水縮合は、基板を高温に熱するなどして脱水縮合反応を促進させることができる(信越化学工業株式会社、「シランカップリング剤、2 (2002)」を参照)。また、この脱水縮合反応は、後記の余計に基板表面上に付着したシランカップリング剤を取り除く工程より後に行っても良く、順序は問わない。
前記脱水縮合は、例えば、基板を裏側からホットプレート等で100℃以上に暖めることによって行うことができる。
前記脱水縮合反応後、基板上の前記シランカップリング剤からなる前記薄膜の厚みを外力によって均一にする処理を行う。前記薄膜の厚みが均一であればある程、これ以後の工程を経て作製されるチャネル層の膜厚も均一になるので、チャネル層の中を通過する電子の散乱がより少なくなると考えられ、それに伴って半導体装置として流すことができる電流値もより大きくすることができ、特性向上に繋がる。
その後、基板表面上に余計に付着したシランカップリング剤を取り除く。ここで、上記の余計に付着したシランカップリング剤とは、基板表面に共有結合や水素結合ではなく、ファンデルワールス結合している又は基板表面に載っているシランカップリング材のことを指す。除去方法としては、例えば、ヘキサン中に基板を浸して超音波洗浄を行うことにより、基板と弱く結合している分子、即ち脱水縮合していないシランカップリング剤などを取り除くことができる。超音波洗浄により、弱く結合している分子はヘキサン中に溶け出し、取り除くことが可能になる。
3.前記微粒子とシランカップリング剤の結合
次に、シランカップリング剤からなる薄膜上に、導体又は半導体からなる前記微粒子を化学結合させる。また、シランカップリング剤からなる薄膜と化学結合していない前記微粒子は除去すればよい。前記微粒子は適当な溶媒中に分散した(コロイド)状態で用いるのが普通であり、前記溶媒を乾燥した後、シランカップリング剤と化学結合していない前記微粒子は、別に用意した溶媒ですすぎ、取り除く。
4.有機分子と前記微粒子との結合
続いて、既にシランカップリング剤からなる薄膜と結合した前記微粒子と、導電性を有する前記有機半導体分子とを結合させ、前記微粒子が前記有機半導体分子で架橋された状態にする。前記有機半導体分子を結合させた後、前記微粒子と化学結合していない前記有機半導体分子を除去する。前記有機半導体分子を液体に溶かして結合させた場合は、用いた溶媒を乾燥することによって余分な前記有機半導体分子を取り除くことができる。
以上のようにして、導体又は半導体からなる前記微粒子と、この微粒子と化学結合した前記有機半導体分子とによって前記導電路が形成され、この導電路の導電性が電界によって制御されるように構成された半導体装置である電界効果トランジスタを作製することができる。
次に、本実施の形態を具体例によって更に詳細に説明する。
<例1>
まず、図3(1)〜(3)に示したように、ゲート電極が形成されかつドーピングされたシリコン基板上に、ゲート絶縁膜としての二酸化シリコンを熱酸化法で作製した後、ゲート絶縁膜上にチタンを配し、その上に金によってソース電極とドレイン電極に相当する電極を作製した。このように、基板上に電極及びゲート絶縁膜が形成されたものを以下、基体と称する。
以下、図17及び図18を参照するが、これらの図は、図3(1)〜(3)に示すような前記基板上に前記電極及び前記ゲート酸化膜を形成する工程を行った後のソース−ドレイン電極間の表面状態を説明するための一部拡大断面図である。
次に、図17(a)に示すように、上記のようにして基板上に電極及びゲート酸化膜が形成されてなる基体15の表面を、後の工程でシランカップリング剤が化学結合し易くするために水酸基化した。具体的には、硫酸と濃度30%過酸化水素水の容積比3対1の混合溶液であるピランハ溶液を用意し、このピランハ溶液を数十度(例えば約60℃)に加熱し、この溶液中に基体15を数十分(例えば約10分間)浸漬した。溶液から基体15を取り出した後、基体15表面に残ったピランハ溶液を純度の高い流水で数十分間(例えば約20分間)洗い流した。
ここで、上記したピランハ溶液を用いるのに代えて、基体15表面に酸素プラズマを照射することにより、基体15表面の水酸基化を行っても良い。酸素プラズマを照射する場合は、例えば出力200W、圧力133MPaで3分間行う。
次に、基体15をエタノール(純度99.5%以上。高速液体クロマトグラフィー用。以下、同様。)中に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。次いで、基体15をエタノールとヘキサン(純度96.0%以上。高速液体クロマトグラフィー用。以下、同様。)の等量混合液中に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。次いで、基体15をヘキサン中に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。これらの工程は、次工程のシランカップリング剤からなる層の基体15表面への形成を、より進行し易くするためのものである。但し、基体15表面を水酸基化するに際し、基体15表面に酸素プラズマ又はオゾンを照射させた場合には、上記のエタノール中、エタノールとヘキサンの等量混合液中、ヘキサン中に基体15を浸す一連の作業は行わなくてよい。
次に、シランカップリング剤としてのN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2、信越化学工業株式会社製。以下、AEAPTMSと称する。)をヘキサンに溶かした0.01〜10体積%(例えば0.5体積%)希薄溶液中に、基体15を数分から数十分(例えば約10分間)浸漬した。これにより、図17(b)に示すように、シランカップリング剤を基体15の表面に結合することができた(なお、図17(b)では、アルキル鎖は簡略化して屈折した線で表してある。以下、同様。)。ここで、上記に代えて、AEAPTMS希薄ヘキサン溶液又は原液からなる飽和蒸気中に基体15を入れ、数十分から数時間(例えば30分間)放置してもよい。
次に、上述のAEAPTMS希薄ヘキサン溶液(又は、AEAPTMS希薄ヘキサン溶液又は原液からなる飽和蒸気)中から基体15を取り出し、ヘキサン又は高純度の水中に基体15を浸し、数分から数十分間超音波で洗浄を行った後、100〜120℃の温度で基体15を加熱した。超音波処理は、例えば出力110W〜120W、発振周波数38kHzで10分間行った。
上記の超音波処理による洗浄で基体15表面に余分に付着した、即ち、基体15表面の水酸基と化学結合していないAEAPTMSを除去することができる。また、100℃以上の温度で基体15を加熱して乾燥処理を行うことによって、AEAPTMS薄膜内及びAEAPTMSと基体表面の水酸基との間の脱水縮合反応を促進し、化学結合を強くすることができる。より具体的には、脱水縮合反応で水素結合から共有結合になり、結合力が強くなる。
次に、基体15をヘキサン溶液中に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。次いで、基体15をヘキサンとトルエン(純度99.7%以上。高速液体クロマトグラフィー用。以下、同様。)の等量混合溶液中に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。次いで、基体15をトルエン溶液中に浸す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。これらの工程は、次に行う金微粒子のシランカップリング剤への結合を、より進行し易くするためのものである。
次に、直径が数ナノメートルの金微粒子をトルエンに溶かした100〜1000ppm(例えば1000ppm)溶液を用意し、この金微粒子−トルエン溶液中に基体15を数時間(例えば1時間程度)浸した。これにより、図17(c)に示すように、金微粒子8とAEAPTMS薄膜との間で化学結合がおきる。
次に、基体15を金微粒子−トルエン溶液から取り出し、AEAPTMS薄膜と化学結合していない金微粒子8をトルエンで軽く洗い流す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。
次に、前記有機半導体分子としての4,4’−ビフェニルジチオール(HSC6H4C6H4SH)をトルエンに溶かした約1mM溶液中に基体15を数時間から1日(例えば1日程度)浸漬した。これにより、図18(d)に示すように、金微粒子8と4,4’−ビフェニルジチオールとが化学結合する。
次に、基体15を4,4’−ビフェニルジチオールのトルエン溶液から取り出し、金微粒子8と化学結合していない4,4’−ビフェニルジチオールをトルエンで軽く洗い流す作業を1回若しくは数回(例えば2回)行った。その後、基体15を乾燥させた。
以上のようにして、金微粒子8と前記有機半導体分子としての4,4’−ビフェニルジチオールとからなる前記導電路を有するチャネル領域が形成され、このチャネル領域の両側にソース及びドレイン電極が設けられ、これらの両電極間にゲート電極が設けられている、図1に示すようなMOS型電界効果トランジスタを作製することができた。
このMOS型電界効果トランジスタにおいて、ソース電極とドレイン電極間に印加した電圧に対し、ソース電極及びドレイン電極間に流れる電流を、ゲート電極に印加する電圧を変化させながら測定したところ、図19に示すように、半導体動作を確認することができた。なお、図19の電流電圧特性グラフにおいて、右端の数値は各測定のゲート電極に印加した電圧値を意味する。
<例2>
シランカップリング剤として、AEAPTMSの代わりに3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン((CH3O)3SiC3H6SH、信越化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でMOS型電界効果トランジスタを作製した(図20)。このトランジスタに対して上記と同様にして電流電圧特性の測定を行ったところ、半導体動作を確認することができた。
以上、本発明を実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記に前記微粒子として前記導体としての金を用いる例を挙げたが、この他に銀又は白金、或いは前記半導体としての硫化カドミウム、セレン化カドミウム又はシリコンからなる微粒子を用いることができる。また、その粒子径は10nm以下であるのがよい。
また、前記微粒子の形状としては球形、長方形、ナノロッドを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば三角形、立方体、直方体、円錐、ナノチューブ等が挙げられる。