最近では水道水よりクリーンだからと、ミネラルウォーターでミルクを作る人も多いようですが、ミネラルウォーターはミルク作りに適しているのでしょうか? また、外出時の調乳はどうすればいいのでしょう? All About「母乳育児ガイド」として活躍する助産師、浅井貴子さんにお話をうかがいました。
【記事】赤ちゃんがいる家庭にウォーターサーバーは必須!?ミネラルウォーターはミルク作りに適さない…!?

体に良いイメージがあるミネラルウォーター。もちろん赤ちゃんにも最適…と思いきや、「ミネラルウォーターをミルク作りに使うのは、あまりおすすめできません」と浅井さん。
なぜ、ミネラルウォーターではだめなのでしょうか?
「ミネラルウォーターには、ナトリウムやカリウムといった電解質、つまり、ミネラルがたくさん含まれています。過剰なミネラルは赤ちゃんの未熟な腎臓に負担をかけてしまうので、使わない方が無難でしょう。」
なるほど。ミネラルは身体にとって必要なものですが、多ければいいというわけではないのですね。
すべてのミネラルウォーターがダメなわけではない
「ただし、ミネラルウォーター全部がだめなわけではない」と浅野さん。
「水は硬度によって、大きく硬水、軟水に分けられるのをご存知でしょうか。硬度とは、水1リットル中に溶け込んでいる電解質、カルシウムとマグネシウムの量を示すものです。WHO(世界保健機構)の基準では、硬水と軟水の分かれ目は硬度120mg/L。それより多い水が硬水、少ない水が軟水に分類されます。軟水は腎臓の負担になるミネラルの量が少ないので、ミルク作りに使っても大丈夫です。」
浅井さんは続けて、比較的良く見かける軟水の商品例を示してくれました。これらは硬度が低いので、ミルク作りに使えます。
【ミルク作りに使える軟水のミネラルウォーターの例】
- ボルヴィック:60mg/L
- クリスタルガイザー:38mg/L
- 信州安曇野の天然水:25 mg/L
- 富士山のバナジウム天然水:29 mg/L
- 南アルプスの天然水:30 mg/L
見ていると、日本の地名がついたミネラルウォーターほど、ミネラルが少なそう。
「確かに、日本のミネラルウォーターには軟水が多い印象ですね。ただし、もちろん全部ではないので、パッケージに表示されている硬水・軟水の種別を必ず確認してください。」
ミルクは「余計なものが入っていない水」で作るのが理想
ミネラルウォーターは硬度によってはミルク作りに適さないことがわかりましたが、粉ミルクに使う「理想的な水」とは、どんなものなのでしょうか。
「それは『純水』です。純水とは、不純物や電解質を可能なかぎり取り除いた水のこと。粉ミルクには赤ちゃんに必要な栄養素や電解質がすでに配合されているため、使う水には、余計な成分が何も入っていないほうがいいんです。」
水道水はどうでしょうか。
「地域によって差はありますが、日本の水道水はほとんどが軟水です。ミルクメーカーの中には、水道水での調乳を推奨しているところもあり、一般的には水道水の利用で問題ありません。ただし、住んでいる場所や環境によって水の質が異なることと、水道水には殺菌のために塩素が加えられているので、品質が安定していて塩素を含まない純水のほうがよりベターといえます。」
純水は「和光堂 赤ちゃんの純水」や「ピジョン ピュアウォーター」など、ミルクメーカーや赤ちゃんグッズメーカーからいくつか発売されており、ドラッグストアやベビー用品店で買えるので、入手は難しくなさそうです。水道水よりも費用はかかってしまいますが、より安全を重視したい場合には、純水の購入を検討してもいいかもしれません。

外出時のミルク作りは衛生面に注意!

最近は外出先でもベビールームなど調乳用のお湯が調達できる場所も増えてきましたが、そうした施設がない公園などへのお出かけ時や、いつも飲ませている水をミルクに使いたい場合は、自分で調乳グッズを持ち歩かなくてはなりません。でも、魔法瓶などにお湯を入れ持参し、哺乳瓶でミルクを作ったら水道水で冷やして…と、外出先でのミルク作りは荷物がかさばり、手間もかかるものですよね。
「少しでも楽に持ち歩く方法を提案するとしたら、水を沸かして哺乳瓶に入れ、保温カバーをしておくことでしょうか。これなら、魔法瓶1本ぶんの荷物は省略可能です。」
それなら、最初から調乳したミルクを哺乳瓶に入れておくのはどうでしょうか?
「事前に調乳して持参するのは避けたほうがいいですね。雑菌の繁殖や腐敗をまねくおそれがあるからです。一度作ったミルクを置いておくのは、長くても1時間以内。飲み残しも捨ててください。」
まだまだ雑菌への抵抗力が弱い赤ちゃん。衛生面には気をつけてあげたいですよね。
外出先での哺乳瓶の消毒は必要?
ところで、一度使った哺乳瓶は消毒するのが普通ですが、外出先ではどう対応したらいいのでしょうか。
「長時間の外出なら、複数の哺乳瓶を持っていくのがベスト。でも、赤ちゃんが4ヶ月以上なら、外出先で哺乳瓶を洗うだけでも特に問題ないでしょう。できればお湯で洗えたらいいですね。」
「なお、一般的に哺乳瓶の消毒が必要なのは、だいたい首が据わるころまでと言われます。それ以降の赤ちゃんは、手に触れたものを口に入れたり、離乳食を開始したりする時期に入るので、哺乳瓶だけ消毒しても意味がありません。外出時に限らず、哺乳瓶はお湯で洗うだけで十分です。」
子どもの健康を考えるあまりに神経質になったりするのは、まだ抵抗力が弱い赤ちゃんのママならありがちなこと。でも、「そこまで神経質にならなくても大丈夫ですよ」と浅井さん。
とりあえず硬水は避ける、雑菌に気を付けるという基本だけは押さえて、ミルク育児とお出かけを楽しみたいものですね。