JP6921609B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種に合わせてプロセススピードの変更や定着器の加熱設定温度を変えずに印刷を続ける、メディア等速性が求められている。該メディア等速性の観点からは、トナーには低温から高温まで幅広い定着温度範囲で適正に定着を完了することが求められている。特に低温における定着温度範囲の拡大は、電源入力時における定着ロールなどの定着部材の表面の定着可能温度までの待ち時間、いわゆるウォームアップタイムの短時間化の達成、又は定着部材の長寿命化が可能になるなど、大きなメリットがある。
特許文献1では、定着時にオフセット現象などを発生させずに高い画像品質の印字物を得るために、トナー粒子を構成する結着樹脂として、シクロオレフィン樹脂を用いることが開示されている。
シクロオレフィン樹脂は、透明性が高いことからカラー画像の形成に適し、比重が小さいことからトナー消費量の削減が可能であり、また、モノマー種を選択することによって、ガラス転移温度の制御が容易である。このように、シクロオレフィン樹脂は種々の利点を有し、トナーの結着樹脂として有用である。
また、シクロオレフィン樹脂は、その分子中に極性基を有しないため吸湿性が低く、良好な帯電性を示す利点があるが、その一方で紙との密着性が低いという問題がある。その結果、結着樹脂としてシクロオレフィン樹脂を含むトナーによって形成される画像は紙に対する定着強度が低く、さらに光沢性も低い。
この課題に対して、特許文献2では、高い光沢性を与えて高い画像品質の印字物を得るために、トナー粒子を構成する結着樹脂としてポリエステル樹脂などを使用することが開示されている。
特許文献2には、シクロオレフィン樹脂を含有する被覆層と、ポリエステル樹脂などの合成樹脂を含有するトナー粒子とを含み、コア/シェル型構造を有するトナーが開示されている。
該トナーは、その表面が紙などへの定着性が乏しいシクロオレフィン樹脂によって被覆されている。しかしながら、トナー定着時の加圧によってシクロオレフィン樹脂とポリエステル樹脂とが混ざり合うため、高い光沢性と高強度な定着画像を実現したものである。これは、シクロオレフィン樹脂とトナー粒子に含まれる結着樹脂との相溶性が比較的良好であることに起因すると推測されている。しかしながら、該トナーは低温定着性を十分に発現することができず、また、十分な定着領域を確保することが困難であった。
一方、トナーの低温定着性をより向上させるために、低溶融粘度の結晶性ポリエステルを用いることが知られている(例えば、特許文献3及び特許文献4)。
特許文献3では、コアシェル構造が提案され、コアに結晶性ポリエステルを含有し、シェルに非晶性ポリエステルを含有するトナーが開示されている。
また、特許文献4にて提案されているトナーにおいては、シクロオレフィン系共重合樹脂を結着樹脂として用い、結晶性ポリエステルを含有させており、高い光沢性と低温定着性を両立している。
本発明は、上記の課題を解決したトナーを提供するものである。
具体的には、トナー粒子中の結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への移行を制御することで、長期使用における優れた耐久性、及び、高温高湿環境下放置後における安定した帯電性を有し、かつ、低温定着性に優れたトナーを提供することにある。
非晶性樹脂、結晶性ポリエステル、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該非晶性樹脂、該結晶性ポリエステル、及び該ワックスを含有する処理前トナー粒子を得る工程、及び
処理前トナー粒子の表面に、環状ポリオレフィン樹脂粒子を静電吸着させた後、熱風処理によって該環状ポリオレフィン樹脂粒子を溶融して、表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を有するトナー粒子を得る工程、
を有し、
該被覆層は、平均層厚が0.1μm以上1.0μm以下であって、
該トナー粒子に対する該被覆層による被覆率が下式:
被覆率(%)=(層厚0.1μm以上の被覆層とトナー粒子との界面の長さ)/(トナー粒子の円周の長さ)×100
で算出されるとき、トナー1000粒子における該被覆率の平均値が90%以上である
ことを特徴とするトナーの製造方法に関する。
本発明のトナーは、非晶性樹脂、結晶性ポリエステル、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、該トナー粒子が、その表面に、環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を有することを特徴とする。
トナー粒子が、その表面に、環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を有することで、トナー粒子に含まれる結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への移行を抑制しうることを見出し、本発明に至った。
本発明において、上記課題を解決するに至った理由を以下のように考えている。
低温定着性を向上させるためには、非晶性樹脂に対して可塑効果を有する結晶性ポリエステルを添加することが有効である。しかし、結晶性ポリエステルを含有させたトナーは、その特性からシャープメルト性を有し低温定着性には優れるが、耐久性が不十分であるという問題がある。
例えば、トナーが高温環境や機械的ストレスにさらされる状況において、トナー中の結晶性ポリエステルは、トナー粒子の表面に移行する場合がある。これは、結晶性ポリエステルは非晶性ポリエステルに比べて低極性であり、非極性である空気との親和性がより高いためであると考えられる。この場合、結晶性ポリエステルが熱によって溶融しトナー粒子の表面が軟化する可能性がある。その結果、トナー粒子の表面の変化や外添剤の埋没などに起因するトナーの流動性低下が生じ、長期使用におけるトナーの耐久性が低下する。
また、トナー粒子の表面の結晶性ポリエステルが溶融し部材に付着することでフィルミングが発生し、部材の耐用寿命の低下や、画像不良の原因となる。
さらに、高湿度環境下では、結晶性ポリエステル分子中に存在する極性基に起因する吸湿性により、トナーの電気抵抗値が低下する。その結果、トナーの帯電量が低下する。結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に存在する場合、この問題は顕著に発生する。
すなわち、結晶性ポリエステルを使用する場合、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に存在せず、かつトナーが高温環境や機械的ストレスにさらされる状況においても、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に移行しない状態を保つことが重要である。
トナー粒子が該被覆層を有することで、結晶性ポリエステルを含有するトナー粒子の内部が、表面の被覆層で覆われるため、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に存在しにくい状態となる。
また、高温環境や機械的ストレスにさらされる場合においては、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に移行しにくい状態を保つことができる。
そのメカニズムを以下のように考えている。結晶性ポリエステルの極性は、非晶性ポリエステルよりは低く、環状ポリオレフィン樹脂よりは高い。そのため、環状ポリオレフィン樹脂は、非極性である空気と接するようにトナー粒子の表面に存在し、一方で結晶性ポリエステルはトナー内部の非晶性ポリエステル中に存在していることがエネルギー的に安定な状態である。ゆえに、トナー粒子の表面に該被覆層が存在することによって、結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への移行を抑制することができると考えている。
本発明に係るトナー粒子の被覆層は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断面観察において、以下の二つの項目を満足することが好ましい。
1)トナー粒子の表面における被覆層の平均層厚が0.1μm以上1.0μm以下であること。
2)トナー粒子に対する被覆層による被覆率が90%以上であること。
被覆層の平均層厚が上記範囲を満たす場合、結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への移行の抑制、長期使用におけるトナーの耐久性の低下、高湿度環境下でのトナーの帯電量の低下、及び部材の耐用寿命の低下や画像不良の抑制の観点から好適である。
また、トナーを紙に低温で定着させる際、トナー中の結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への染み出しを適切にし、トナーの紙に対する定着強度の低下を防止することができる。一方、トナー粒子に対する被覆層による被覆率が上記範囲を満たす場合、トナー粒子の表面の露出割合が小さく、高温環境や機械的ストレスに晒された場合でも、結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への移行の抑制の観点から好適である。また、長期使用におけるトナーの耐久性の低下、高湿度環境下でのトナー帯電量の低下、及び部材の耐用寿命の低下や画像不良の抑制の観点から好適である。
なお、被覆層の平均層厚、及びトナー粒子に対する被覆層による被覆率の算出方法については、後述する。
外添法の場合、混合装置を使用し、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂粒子を
静電吸着させた後、機械的衝撃にてトナー粒子の表面を加圧し、環状ポリオレフィン樹脂の一部あるいは全量を溶融させて被覆層を形成するのが良い。混合装置としては、例えば、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)、メカノヒュージョン装置などが挙げられる。
熱処理法の場合、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂粒子を静電吸着させた後、熱処理によって、環状ポリオレフィン樹脂の一部あるいは全量を溶融させて被覆層を形成するのが良い。
流動床法の場合、トナー粒子の流動床を形成し、この流動床中に環状ポリオレフィン樹脂溶液又は環状ポリオレフィン樹脂粒子を噴霧塗布し、溶液に含まれる溶媒を乾燥させて被覆層を形成することによって製造される。流動床法を実施するには、例えば、粒子コーティング・造粒装置SFP(パウレック(株)製)などを利用できる。
湿式法の場合、環状ポリオレフィンの樹脂溶液中にトナー粒子を含浸させ、スクリューによって混合、撹拌、および乾燥を行うことによって被覆層を形成される。湿式法を実施するには、例えば、ナウタミキサなどを利用できる。また、シード法(乳化重合法)の場合、オレフィンモノマー溶液をトナー粒子分散液に添加し、該トナー粒子の表面でオレフィンモノマーを重合させることによって、被覆層を形成することができる。また、乳化凝集法の場合、環状ポリオレフィン樹脂粒子分散液をトナー粒子分散液に添加し、該樹脂粒子をトナー粒子の表面に付着させることによって、被覆層を形成することができる。得られたトナーは、濾過、純水による洗浄、真空乾燥などの一般的な単離精製方法によって反応系から容易に単離できる。
本発明において、該環状ポリオレフィン樹脂の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
通常、熱処理されたトナーは、溶融粘度の低い結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に移行する可能性がある。その際、トナー粒子の表面の結晶性ポリエステルが軟化するため、表面の変化や外添剤の埋没に起因するトナーの流動性低下が生じ、耐久性が低下する。
また、トナー粒子の表面の結晶性ポリエステルが溶融し部材に付着することでフィルミングが発生し、部材の耐用寿命の低下や、画像不良の原因となる。
しかし、トナー粒子の表層に環状ポリオレフィン樹脂が存在する状態でトナー粒子に対して熱処理を施した場合、環状ポリオレフィンが溶融されトナー粒子の表面に均一な樹脂層を形成することができる。そのため、トナー粒子の表面にトナー粒子の内部が露出した部分が少なくなり、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面へ移行する割合が低下する。その結果、耐久性の低下、部材汚染、及び帯電量の低下がより抑制される。また、定着時には結晶性ポリエステルの有するシャープメルト性によって優れた低温定着性がより発揮される。
具体的には、以下の樹脂又は重合体を例示できる。
ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン又はポリビニルトルエンなどのスチレン又はその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテ
ル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。
ここで、分岐ポリマーを作製する場合には、非晶性樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多価化合物を使用することが好ましい。
従って、分岐ポリマーを作製する場合は、上記原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸又はそれらの酸無水物若しくはそれらの低級アルキルエステル、及び/又は、3価以上のアルコールを含めるとよい。
上記多価アルコールの具体例は以下の通りである。
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(I)で表されるビスフェノール誘導体、下記式(I)の水添物、下記式(II)で示されるジオール類が挙げられる。
該2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独で又は複数を併用して用いることができる。
2価のカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸が好適に例示される。
3価以上のカルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸が挙げられる。また、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルを用いてもよい。
これらのうち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
該2価のカルボン酸など及び3価以上のカルボン酸は、単独で又は複数を併用して用いることができる。
例えば、非晶性ポリエステル樹脂と非晶性ビニル系樹脂とが結合したハイブリッド樹脂が挙げられる。該ハイブリッド樹脂の製造方法としては、非晶性ビニル系樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方又は両方の樹脂の重合反応を行う方法が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーのうちビニル系樹脂と反応し得るものとしては、例えば、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。一方、非晶性ビニル系樹脂を構成するモノマーのうち非晶性ポリエステル樹脂と反応し得るものとしては、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸又はメタクリル酸エステル類が挙げられる。
以上60/40以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
該非晶性樹脂Aの軟化点は70℃以上100℃未満であることが低温定着性の観点から好ましい。
一方、非晶性樹脂Bの軟化点は100℃以上150℃以下であることが耐ホットオフセットの観点から好ましい。
上記炭素原子に対する酸素原子の存在比率とは、トナー粒子の表面における結晶性ポリエステル由来の酸素原子の存在量をO(atm%)とし、環状ポリオレフィン樹脂由来の炭素原子の存在量をC(atm%)としたときに、(O atm%/C atm%)×100で算出される比率である。
該存在比率は、トナー粒子の表面における、結晶性ポリエステルと環状ポリオレフィン樹脂の存在割合に相関する。
該存在比率が上記範囲を満たす場合、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂が多く存在しているので、トナー粒子の表面の疎水性が向上し、高温高湿環境下における帯電量低下が抑制される。
また、環状ポリオレフィン樹脂と結晶性ポリエステルとの親和性は低いことから、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に移行しにくく、環状ポリオレフィン樹脂から離れるようによりトナー内部へ移行し易くなる。
その結果、結晶性ポリエステルがトナー粒子の表面に存在しにくい状態を保つことができ、部材汚染による部材の耐用寿命の低下や、帯電量変動による画像不良の発生を抑制することが可能である。
なお、該存在比率は、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を有することで、上記範囲に制御することができる。
これらのうち、エチレン及びα―オレフィンの少なくとも一方と環状オレフィンとの共重合体であることが好ましく、エチレン及びα―オレフィンの少なくとも一方とノルボルネン構造を主骨格に有する化合物との共重合体であることがより好ましく、エチレンとノルボルネンとの共重合体であることがさらに好ましい。該エチレンとノルボルネンとの共重合体は無色透明で高い光透過性を有するからである。
該α―オレフィンとしては、プロピレン、ブチレン、1−ブテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
これらのうち、炭素数が2〜12であるものが好ましく、炭素数が2〜6であるものがより好ましい。
エチレン及びα−オレフィンは、1種を単独で又は2種以上を併用できる。
該エチレン及び/又はα―オレフィンを使用した場合、これらはワックスとの親和性が高いため、定着溶融時にワックスが迅速に溶融したトナー粒子の表面に移行し、離型性が向上する。
また、該環状オレフィンは、ノルボルネン構造を主骨格に有する化合物であることが好ましい。例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソボルネン、テトラシクロドデセ
ン、ジシクロペンタジエンが挙げられる。
該ノルボルネン構造を主骨格に有する化合物は、適度な立体的嵩高さを有するため、その立体障害と極性の低さによって結晶性ポリエステルの表面移行を進行させにくい。そのため、キャリア、現像スリーブ、感光体などへのフィルミングを発生させにくく、部材の耐用寿命の低下や画像不良を顕著に防止することができる。
さらに、該環状オレフィンは、1又は2つ以上の置換基が結合した置換体であってもよい。該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基などのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、エチリデン基などのアルキリデン基、フェニル基、トリル基、又はナフチル基などのアリール基などが挙げられる。
これら環状オレフィンは、1種を単独で、又は2種以上を併用できる。
該共重合反応は、例えば、二重結合開放反応及び/又は開環重合反応に用いられる触媒の存在下、適当な溶媒中にて実施するとよい。
該触媒の具体例としては、メタロセン触媒(ジルコニウム、ハフニウムなどを含むものがある)、チーグラー触媒、又はメタセシス重合触媒などが挙げられる。
該共重合反応の具体例として、例えば、触媒の1種又は2種以上の存在下、−78〜150℃(好ましくは20〜80℃)の温度下、及び、1×103〜64×105Paの圧力下で、エチレン及び/又はα−オレフィンと環状オレフィンとを反応させるとよい。
この反応系には、アルミノキサンなどの共触媒を添加してもよい。
エチレン及び/又はα−オレフィンと環状オレフィンとの使用割合は特に制限されず、得ようとする共重合体樹脂の種類などに応じて広い範囲から適宜選択できるが、好ましくはモル比で50:1〜1:50であることが好ましく、より好ましくは20:1〜1:20である。
例えば、環状オレフィンとしてノルボルネンを用いる場合、得られる環状ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ノルボルネンの使用割合に応じて変化する。
ノルボルネンの使用量を増加させると、Tgも上昇する傾向にある。例えば、ノルボルネンの使用量を、エチレンの使用量とノルボルネンの使用量との合計量の約60質量%にすると、Tgはほぼ60〜70℃になる。
さらに、数平均分子量、軟化点、融点、粘度、誘電特性、非オフセット温度域、透明度、分子量、分子量分布などの物性も、使用するモノマーの種類及び使用割合などを適宜選択することによって所望の値に調整できる。
また、メタロセン触媒を用いる場合、反応溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などの不活性炭化水素が好ましい。メタロセン触媒を、例えば、トルエンに溶解させると、予備活性化され、共重合反応が円滑に進行する。
本発明において、環状ポリオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐久性及び帯電性の観点より、65〜105℃であることが好ましく、より好ましくは75〜85℃である。ガラス転移温度を65〜105℃の範囲に設定すれば、融点が120〜160℃になり、充分な耐久性を付与することが可能である。
そのなかでも、結晶性ポリエステルが、炭素数4以上18以下の脂肪族ジオールと、炭素数4以上18以下の脂肪族ジカルボン酸との縮重合物であることが好ましい。
結晶性ポリエステルを使用することにより、トナーの低温定着性が良化する理由は、非晶性樹脂と結晶性ポリエステルが相溶し、非晶性樹脂の分子鎖の間隔を広げ、分子間力を弱めるためであると考えている。このため、ガラス転移温度(Tg)が大幅に低下し、溶融粘度を低い状態にすることができる。よって、非晶性樹脂と結晶性ポリエステルとの相溶性を高めることにより、低温定着性は良化していくものと考えられる。
非晶性樹脂と結晶性ポリエステルとの相溶性を高めるためには、結晶性ポリエステルを構成するモノマー(例えば、脂肪族ジオール及び/又は脂肪族ジカルボン酸)の炭素数を小さくし、エステル基濃度を高め、極性を高めていくことが好ましい。
一方で、Tgが大幅に低下したトナーについては、機械的ストレスや高温高湿環境下においても、結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への染み出しを抑制する必要がある。
そのような環境にトナーがさらされた場合に、相溶していたトナー中の結晶性ポリエステルを再結晶化させ、トナーのTgを非晶性樹脂のTgまで戻す必要がある。
ここで、結晶性ポリエステルのエステル基濃度が高く、非晶性樹脂と結晶性ポリエステルの相溶性があまりにも高い場合、結晶性ポリエステルを再結晶化させることが難しくなり、トナー粒子の表面への染み出しが進行することでフィルミングなどの部材汚染が発生しやすくなる。
以上のことから、低温定着性と染み出し防止を両立させる観点より、結晶性ポリエステルが、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールと、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸との縮重合物がより好ましい。
結晶性ポリエステルの含有量が上記範囲である場合、低温定着性が十分に向上し、かつ、トナー粒子中に結晶性ポリエステルが微分散しやすい。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
これらの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス、又はカルナバワックスのような脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
該ワックスの含有量は、非晶性樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
また、示差走査熱量計で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、45℃以上140℃以下であることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内である場合、トナーの保存性と耐ホットオフセット性が両立できるため好ましい。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色したものが挙げられる。
着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の含有量は、非晶性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
負帯電性荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン
酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
正帯電性荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の含有量は、非晶性樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
該無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子のような無機微粒子が好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粒子が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粒子であることが好ましい。
流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
該外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。また、トナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉又は未酸化の鉄粉;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、又はそれらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体;該磁性体、及び該磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂を含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)など、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、二成分系現像剤中のトナーの含有量は、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
すなわち、上記トナー粒子は、非晶性樹脂、結晶性ポリエステル及びワックスを含むトナー組成物を溶融混練し、得られた混練物を粉砕して得られたものであることが好ましい。
本発明において、トナー粒子が溶融混練工程を経て製造されることで、結晶性ポリエステル及びワックスの分散性が顕著に向上する。
これは、溶融混練工程を含む製造方法を用いて製造されたトナーは、溶融混練時の熱とシェアによって、トナー粒子の原材料がしっかりと混合されるため、トナー粒子となった時にトナー粒子中の結晶性ポリエステル及びワックスの分散性が向上すると推測される。その結果、トナー粒子中のワックスが微分散し、耐ホットオフセット性が向上する。また、機械的ストレス環境下や高温高湿環境下による結晶性ポリエステル及びワックスのトナー粒子の表面への染み出しが抑制され、耐久性により優れる。
まず、原料混合工程では、非晶性樹脂、結晶性ポリエステル及びワックス、並びに、必要に応じて着色剤などの他の成分を、所定量秤量して配合し、混合する。
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、非晶性樹脂中に他の原材料などを分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
さらに、溶融混練することによって得られる混練物は、2本ロールなどで圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、得られた混練物を、所望の粒径にまで粉砕する。該粉砕工程では、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕するとよい。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。
さらに、該トナー粒子の表面に、上述の方法を用いて、環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を形成し、トナーを得る。
乳化凝集法では、目的の粒子径に対して、十分に小さい、トナー粒子の構成材料から成る微粒子の水系分散液を前もって準備し、その微粒子を水系媒体中で所望の粒子径になるまで凝集し、加熱により樹脂を融着させてトナー粒子を製造する。
すなわち、乳化凝集法では、トナー粒子の構成材料から成る微粒子分散液を作製する分散工程、トナー粒子の構成材料から成る微粒子を凝集させて、所望の粒子径になるまで粒子径を制御する凝集工程、得られた凝集粒子の分散液に、さらにシェル相を形成するための環状ポリオレフィン樹脂微粒子を添加することによって、凝集粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂微粒子を付着させるシェル付着工程、環状ポリオレフィン樹脂微粒子を表面に付着させた凝集粒子を融合させる融合工程、及び冷却工程を経ることによって、トナー粒子の表面に、環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を有するトナーを製造する。
具体的には、非晶性樹脂、結晶性ポリエステル、又は環状ポリオレフィン樹脂を、これらが溶解する有機溶媒に溶解して、界面活性剤や塩基性化合物を加える。続いて、ホモジナイザーなどにより撹拌を行いながら、水系媒体をゆっくり添加し樹脂微粒子を析出させる。その後、加熱又は減圧して溶剤を除去することにより、樹脂微粒子の水系分散液を作製する。該樹脂を溶解するために使用する有機溶媒としては、該樹脂を溶解できるものであればどのようなものでも使用可能であるが、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、クロロホルムなどが溶解性の観点から好ましい。
該乳化時に使用する界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系などのアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型などのカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系などの非イオン系界面活性剤などが挙げられる。該界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
該乳化時に使用する塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基;アンモニア、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルアミノエタノール、及びジエチルアミノエタノールなどの有機塩基が挙げられる。該塩基は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂微粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.05〜0.4μmであることがより好ましい。なお、体積分布基準の50%粒径(d50)の測定は、動的光散乱式粒度分布計(ナノトラックUPA−EX150:日機装社製)を使用するとよい。
一方、ワックス微粒子の水系分散液は、界面活性剤を含有した水系媒体にワックスを加え、ワックスの融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザー(例えば、エム・テクニック社製の「クレアミックスWモーション」)や圧力吐出型分散機(例えば、ゴーリン社製の「ゴーリンホモジナイザー」)で粒子状に分散させた後、融点未満まで冷却することで作製することができる。
水系分散液中におけるワックス微粒子の分散粒径は、体積分布基準の50%粒径(d50)が0.03〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
該凝集剤として、ナトリウム、カリウムなどの1価の金属の金属塩;カルシウム、マグネシウムなどの2価の金属の金属塩;鉄、アルミニウムなどの3価の金属の金属塩などが挙げられる。
該凝集剤の添加混合は、混合液中に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度以下の温度で行うことが好ましい。この温度条件下で混合を行うことで、凝集が安定した状態で進行する。
混合液への凝集剤の混合は、公知の混合装置、ホモジナイザー、ミキサーなどを用いて行うことができる。
該凝集工程において形成される凝集粒子の体積平均粒径としては、特に制限はないが、通常、得ようとするトナー粒子の体積平均粒径と同じ程度になるよう、4.0μm以上7.0μm以下に制御するとよい。該制御の方法は、凝集剤の添加混合時の温度と撹拌混合の条件を適宜設定することにより容易に行うことができる。なお、トナー粒子の粒度分布はコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:コールター社製)にて測定できる。
また、上記凝集工程で得られた凝集粒子の分散液に、さらにシェル相を形成するための環状ポリオレフィン樹脂微粒子を添加することによって、凝集粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂微粒子を付着させる。
融合工程に入る前に、凝集粒子間の融着を防ぐため、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤などを適宜投入することができる。
キレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びそのNa塩などのアルカリ金属塩、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸カリウム及びクエン酸ナトリウム、ニトリロトリアセテート(NTA)塩、COOH及びOHの両方の官能性を含む多くの水溶性ポリマー類(高分子電解質)が挙げられる。
また、加熱温度としては、凝集粒子に含まれる樹脂のガラス転移温度から、樹脂が熱分解する温度の間であればよい。加熱・融合の時間としては、加熱の温度が高ければ短い時間で足り、加熱の温度が低ければ長い時間が必要である。すなわち、加熱・融合の時間は、加熱の温度に依存するので一概に規定することはできないが、一般的には10分間〜10時間である。
本発明において、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂などを加えて被覆層を形成させた後、熱処理を実施し、該被覆層をトナー粒子の表面に固着させることが好ましい。本発明において、該熱処理は、樹脂粒子の合一防止及び形状の均一性の観点から、熱風による処理であることが好ましい。
原料定量供給手段1により定量供給された樹脂粒子は、圧縮気体流量調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した樹脂粒子は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
このとき、処理室6に供給された樹脂粒子は、処理室6内に設けられた樹脂粒子の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室6に供給された樹脂粒子は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された樹脂粒子を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる(なお、11は熱風供給手段出口を示す)。処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段7の出口部における温度が上記の範囲内であれば、樹脂粒子を加熱しすぎることによる樹脂粒子の融着や合一を防止しつつ、樹脂粒子を均一に処理することが可能となる。
また、粉体粒子供給口14は、供給された樹脂粒子の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、回収手段10も、旋回された樹脂粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に接線方向に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口14から供給される熱処理前樹脂粒子の旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室6内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前樹脂粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前樹脂粒子の分散性がさらに向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理樹脂粒子を得ることができる。その後、必要に応じ選択された無機微粒子などの外添剤を加えて、トナーとしてもよい。
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)を用い、校正作業時の測定及び解析条件で測定するとよい。
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。
測定範囲30〜180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
ワックス、結晶性ポリエステルの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしてはアルミニウム製の空パンを用いる。
本発明において、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そし
て、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
トナー又は樹脂粒子(以下、トナーなどともいう)の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波
分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナーなど約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーなどを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
トナーに含まれる樹脂(環状ポリオレフィン樹脂、結晶性ポリエステルなど)の構造は、核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)により分析する。
測定装置:JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数:1024回
測定溶媒:DMSO−d6
試料をDMSO−d6に可能な限り溶解し、上記条件で測定を行う。得られるスペクトルのケミカルシフト値及びプロトン比より、試料の構造などを決定する。
トナー粒子の表面における炭素原子に対する酸素原子の存在比率[O/C]は、PHI
5000 VERSAPROBE II(アルバック・ファイ株式会社)を使用し、以下の条件によりX線電子分光法(XPS)により分析を行う。
測定サンプルとしては、インジウム箔上にトナー1mgを張り付けたものを用意する。その際、インジウム箔部が露出しないようにトナーを均一に張り付ける。
本発明において、トナー粒子の表面における結晶性ポリエステル由来の酸素原子の存在量をO(atm%)とし、環状ポリオレフィン樹脂由来の炭素原子の存在量をC(atm%)としたときに、該炭素原子に対する該酸素原子の存在比率は下記(式1)より算出する。
なお、XPSでは、物質のごく表面(数nm)の元素分布を測定することが可能である。
(式1):炭素原子に対する酸素原子の存在比率(%)=(O atm%/C atm%)×100
(測定条件)
照射線 :Al Kd線
出力 :25W 15kV
PassEnergy :58.7eV
Stepsize :0.125eV
XPSピーク(P2) :O1S、C1S
透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、トナー粒子の表面に被覆層が存在するか否かを確認することできる。
トナーを四酸化ルテニウムで染色することによって、環状ポリオレフィン樹脂が明瞭な
コントラストとして得られる。環状ポリオレフィン樹脂はカルボニル基を有する非晶性樹脂よりも、強く染色される。これは、四酸化ルテニウムと環状ポリオレフィン樹脂中のポリオレフィン部とが相互作用することによって、環状ポリオレフィン樹脂への染色材料の染み込みがトナー粒子内部の有機成分よりも強くなるためと考えられる。
染色の強弱によって、ルテニウム原子の量が異なるため、強く染色される部分は、これらの原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。ゆえに非晶性ポリエステルと環状ポリオレフィン樹脂とを区別することができ、トナー粒子の表面に被覆層が存在するか否かを検証することができる。
具体的手順は以下の通りである。
オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施し、光硬化性樹脂D800(日本電子社)で包埋した。その後、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度1mm/sで膜厚60nmのトナー断面を作製した。
得られた断面を、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、RuO4ガス 500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(JEOL社、JEM2800)を用いてSTEM観察を行った。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelで取得した。得られた画像については、画像処理ソフト「Image−Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて2値化(閾値120/255段階)を行った。
また、該STEM観察により得られたトナー断面画像において、トナー1000粒子に対して、下記式に従い、トナー粒子に対する被覆層による被覆率を算出し、その平均値をとった。
被覆層による被覆率(%)=(層厚0.1μm以上の被覆層とトナー粒子との界面の長さ)/(トナー粒子の円周の長さ)×100
さらに、該STEM観察により得られたトナー断面画像から、被覆層の層厚を測定した。層厚とは、トナー粒子の被覆層の内部の界面からトナー粒子の表面までの被覆層の厚みのことである。トナー100粒子において、各トナー粒子の断面の被覆層の厚みを任意に10点測定し、その平均値を被覆層の平均層厚とした。
このようにして、TEMから得られたトナー断面画像により、トナー粒子の表面に被覆層が存在するか否かを確認することできる。
また、結晶性ポリエステルは、ポリオレフィン部を有さないため環状ポリオレフィン樹脂よりも弱く染色される。ゆえに、トナー中に結晶性ポリエステルが含まれる場合は、コントラストの差によって、結晶性ポリエステルと環状ポリオレフィン樹脂とは区別することが可能である。
樹脂などの軟化点は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。
本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSmin
の和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
<非晶性樹脂Aの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:71.9部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:26.8部(0.16モル;多価カルボン酸総モル数に対して96.0mol%)
・チタンテトラブトキシド:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:1.3部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ(第2反応工程)、軟化点(Tm)が94℃、ガラス転移温度(Tg)が57℃である非晶性ポリエステル樹脂Aを得た。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:71.8部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:15.0部(0.09モル;多価カルボン酸総モル数に対して55.0mol%)
・アジピン酸:6.0部(0.04モル;多価カルボン酸総モル数に対して25.0mol%)
・チタンテトラブトキシド:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:6.4部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ(第2反応工程)、軟化点(Tm)が132℃、ガラス転移温度(Tg)が61℃である非晶性ポリエステル樹脂Bを得た。
オートクレーブにキシレン50部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下、密閉状態で185℃まで昇温した。
スチレン95部、n−ブチルアクリレート5部、ジ−t−ブチルパーオキサイド5部、及びキシレン20部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を185℃にコントロールしながら、3時間連続的に滴下し重合させた。
さらに同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂Cを得た。
得られたスチレン−アクリル酸エステル系樹脂Cの重量平均分子量(Mw)は3500で、軟化点(Tm)は96℃、ガラス転移温度(Tg)は58℃であった。
室温下、三口フラスコをエチレンで置換した後、ノルボルネン100部とトルエン120部とを加えた。次いで、さらにエチレンを導入して数回加圧し(3.0×105Pa)、溶液をエチレンで飽和させた。
圧力を3.0×105Pa(ゲージ圧)に設定した後、メチルアルミノキサン0.1部をトルエン1.0部に溶解したトルエン溶液を反応器中に滴下し、本混合物を70℃で15分撹拌した。
並行して、室温下、二口フラスコを窒素で置換した後、トルエン1.0部にメチルアルミノキサン0.1部を加え溶解した。得られたトルエン溶液に二塩化イソプロピレン(1−インデニル)シクロペンタジエニルジルコニウム0.3部を加え、30分間放置し予備活性化させた。予備活性化させた錯体溶液を上述のノルボルネン反応液中に滴下した。
得られた混合物を70℃で1時間撹拌し、このときエチレンをさらに計量導入することによって、エチレンの圧力を3.0×105Paに保持し、反応物を得た。得られた反応物をアセトン1000部に徐々に滴下した後、10分間撹拌し、次いで沈殿物を濾別した。濾過ケーキを、10%濃度の塩酸とアセトンで交互に数回洗浄した後、中性になるまでケーキをイオン交換水で洗浄し、ポリマーを得た。
得られたポリマーを濾別し、0.2×105Paの圧力及び80℃の温度にて20時間乾燥した後、ポリオレフィン樹脂を得た。
得られたポリオレフィン樹脂 10部をトルエン30部に溶解した溶液を調製した。並行して、ノニオン界面活性剤0.4部をイオン交換水40部に溶解した溶液を調製した。室温中、調製した界面活性剤の水溶液に対し、プライミクス(株)製T.K.ホモミキサーにて撹拌しながら、ポリオレフィン樹脂のトルエン溶液を滴下した。その後、室温にて1時間継続撹拌し、乳化液とした。
室温中、得られた乳化液をメタノール300部に徐々に滴下し、スリーワンモーター(プロペラ翼)を用いて20分間撹拌した。
析出した樹脂粒子を濾別し、イオン交換水30部で4回洗浄した。得られた樹脂粒子を0.2×105Paの圧力及び80℃の温度にて20時間乾燥した後、ポリオレフィン樹脂粒子D1を得た。D1の物性などを表1に示す。
ポリオレフィン樹脂粒子D1の製造例において、エチレン、α―オレフィン類、及び環状オレフィンの種類、並びに物性を表1となるように適宜条件を変更した以外は、ポリオレフィン樹脂粒子D1の製造例と同様の操作を行い、ポリオレフィン樹脂粒子D2〜D9
を得た。
・1,6−ヘキサンジオール:34.5部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:65.5部(0.29モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸錫:0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃で撹拌しつつ、3時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
その後、反応槽内を5kPa以下へ減圧して、200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステルE1を得た。
結晶性ポリエステルE1の製造例において、ジオール及びジカルボン酸の種類を表2となるように適宜条件を変更した以外は、結晶性ポリエステルE1の製造例と同様の操作を行い、結晶性ポリエステルE2〜E11を得た。
・非晶性樹脂A 75.0部
・非晶性樹脂B 25.0部
・結晶性ポリエステルE1 7.5部
・炭化水素ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度(融点)90℃) 5.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7.0部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.3部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5minで混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。
得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s−1、分散ローター回転数を120s−1とした。
得られたトナー粒子1 100部に、4.5部のポリオレフィン樹脂粒子D1を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で、回転数30s−1、回転時間10minで混合した。
得られた樹脂粒子を、図1で示す熱処理装置によって熱処理を行い、熱処理樹脂粒子1を得た。熱処理装置の運転条件は以下の通りである。
フィード量;5kg/hr、熱風温度;150℃、熱風流量;6m3/min.、冷風
温度;5℃、冷風流量;4m3/min.、冷風絶対水分量;3g/m3、ブロワー風量;20m3/min.、インジェクションエア流量;1m3/min.。得られた熱処理樹脂粒子1は、重量平均粒径(D4)が6.4μmであった。
得られた熱処理樹脂粒子1 100部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s−1、回転時間10min.で混合して、トナー1を得た。得られたトナー1の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、トナーの重量平均粒径(D4)は6.4μmであった。さらに、TEM観察によって、トナー1はトナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー1の製造例においてトナー粒子1と同様の製造方法でトナー粒子2を得た。
得られたトナー粒子2 100部に、4.5部のポリオレフィン樹脂粒子D1を添加し、ノビルタ(ホソカワミクロン(株)製)に投入して、回転数150s−1、回転時間10min.で混合し、トナー粒子2の表面をポリオレフィン樹脂粒子D1で被覆した樹脂粒子2を得た。
得られた樹脂粒子2 100部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s−1、回転時間10min.で混合して、トナー2を得た。得られたトナー2の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー2はトナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー1の製造例においてトナー粒子1と同様の製造方法でトナー粒子3を得た。
得られたトナー粒子3 100部に、4.5部のポリオレフィン樹脂粒子D1を添加し、メカノハイブリッド(日本コークス(株)製)に投入して、回転数160s−1、回転時間5min.で混合し、トナー粒子3の表面をポリオレフィン樹脂粒子D1で被覆した樹脂粒子3を得た。
得られた樹脂粒子3 100部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s−1、回転時間10min.で混合して、トナー3を得た。得られたトナー3の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー3はトナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
(ポリオレフィン樹脂分散液の作製)
100部のポリオレフィン樹脂D1を、トルエン200部及びイソプロピルアルコール100部の混合溶媒に溶解させてポリオレフィン樹脂D1溶液を得た。
室温中、調製したポリオレフィン樹脂D1溶液をプライミクス(株)製T.K.ホモミキサーにて撹拌しながら、10%アンモニア水溶液を5分間の滴下時間で14部滴下し、10分間混合した。
さらに、イオン交換水900部を毎分7部の速度で滴下し、転相させて、乳化液を得た。すぐに得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2Lのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレータにセットした。
ナスフラスコを回転させながら、突沸に注意し有機溶媒を除去した後、ナスフラスコを氷冷して分散液を得た。イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるよう調製し、ポリオレフィン樹脂D1分散液を得た。
トナー1の製造例において、結晶性ポリエステルE1の代わりに結晶性ポリエステルE2を用い、その使用量を7.5部から6.0部に変更したこと以外、トナー1の製造例と同様の製造方法でトナー粒子4を得た。
得られたトナー粒子4 100部を、粒子コーティング装置SFP−01型(パウレック(株)製)の流動層中に給気温度80℃で循環させた。次いで、ポリオレフィン樹脂D1分散液22.5部を、スプレー速度0.4部/minで60分間、粒子コーティング装置SFP−01型(パウレック(株)製)の流動層中に噴霧して樹脂粒子4を得た。
得られた樹脂粒子4 100部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s−1、回転時間10min.で混合して、トナー4を得た。得られたトナー4の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー4はトナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
(非晶性ポリエステル樹脂分散液の作製)
非晶性ポリエステル樹脂A及びBを、イオン交換水80%、非晶性ポリエステル樹脂20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、加熱条件を100℃としてキャビトロンを運転し、非晶性ポリエステル樹脂A分散液及び非晶性ポリエステル樹脂B分散液(固形分濃度:20%)をそれぞれ得た。
(ポリオレフィン樹脂分散液の作製)
100部のポリオレフィン樹脂D1を、トルエン200部及びイソプロピルアルコール100部の混合溶媒に溶解させてポリオレフィン樹脂D1溶液を得た。
室温中、調製したポリオレフィン樹脂D1溶液をプライミクス(株)製T.K.ホモミキサーにて撹拌しながら、10%アンモニア水溶液を5分間の滴下時間で14部滴下し、10分間混合した。
さらに、イオン交換水900部を毎分7部の速度で滴下し、転相させて、乳化液を得た。すぐに得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2Lのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレータにセットした。
ナスフラスコを回転させながら、突沸に注意し有機溶媒を除去した後、ナスフラスコを氷冷して分散液を得た。イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるよう調製し、ポリオレフィン樹脂D1分散液を得た。
(結晶性ポリエステル分散液の作製)
80部の結晶性ポリエステルE3、及びイオン交換水720部をステンレスビーカーに入れ、100℃に加熱した。結晶性ポリエステルE3が溶融した時点で、ホモジナイザーを用いて攪拌した。次いで、アニオン性界面活性剤(固形分濃度:20%)2.0部を滴下しながら、乳化分散を行い、結晶性ポリエステルE3分散液(固形分濃度:10%)を得た。
・C.I.ピグメントブルー15:3 1000部
・アニオン界面活性剤 150部
・イオン交換水 9000部
以上を混合した後、高圧衝撃式分散機を用いて着色剤を分散した。
得られた着色剤分散液における着色剤粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は0.16μm、着色剤濃度は23%であった。
(ワックス分散液の作製)
・炭化水素ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度(融点)90℃) 45部
・アニオン性界面活性剤 5部
・イオン交換水 150部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積分布基準の50%粒径(d50)が210nmであるワックス分散液(ワックス濃度:20%)を調製した。
・非晶性ポリエステル樹脂B分散液 125部
・結晶性ポリエステルE3分散液 50部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザーで混合・分散した。これにポリ塩化アルミニウム0.15部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。その後、
・着色剤分散液 30.5部
・ワックス分散液 25部
以上を追加し、さらにポリ塩化アルミニウム0.05部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌機の回転数を調整しながら、60℃まで昇温し、60℃で15分間保持した。
その後、0.05℃/分で昇温しながら10分間ごとに、コールターマルチサイザーIII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積分布基準の50%粒径(d50)が5.0μmとなったところで、ポリオレフィン樹脂D1分散液22.5部(追加樹脂)を3分間かけて投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。
その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で96℃まで昇温し、96℃で保持した。
30分間ごとに光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、5時間目で球形化したので、1℃/分で20℃まで降温して樹脂粒子を固化させた。
その後、生成物をろ過し、イオン交換水で十分洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより、トナー粒子5を得た。
100部のトナー粒子5に対して、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s−1、回転時間10min.で混合して、トナー5を得た。得られたトナー5の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー5はトナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー5の製造例において、結晶性ポリエステルの種類及び含有量、並びに、ポリオレフィン樹脂の含有量が表3となるように適宜条件を変更した以外はトナー5の製造例と同様の操作を行い、トナー6〜9を得た。
得られたトナー6〜9の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー6〜9は、それぞれ、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー5の製造例において、結晶性ポリエステルの種類及び含有量、並びに、ポリオレフィン樹脂の種類、及び含有量が表3となるように適宜条件を変更した以外はトナー5の製造例と同様の操作を行い、トナー10〜16を得た。
得られたトナー10〜16の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー10〜16は、それぞれ、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー5の製造例において、非晶性樹脂の種類、結晶性ポリエステルの種類及び含有量、並びに、ポリオレフィン樹脂の種類、及び含有量が表3となるように適宜条件を変更した以外はトナー5の製造例と同様の操作を行い、トナー17を得た。
得られたトナー17の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー17はトナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー17の製造例において、ワックスの種類を表3となるように変更した以外はトナー17の製造例と同様の操作を行い、トナー18及び19を得た。
得られたトナー18及び19の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー18及び19は、それぞれ、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
トナー1の製造例において、ポリオレフィン樹脂の種類が表3となるように変更した以外はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー20を得た。
得られたトナー20の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー20は、トナー粒子の表面にポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナーの物性を表3に示す。
トナー1の製造例において、環状ポリオレフィン樹脂の添加量が表3となるように変更した以外はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー21を得た。
得られたトナー21の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観測された。また、TEM観察によって、トナー21は、トナー粒子の表面に環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層が形成されていないことを確認した。トナー物性を表3に示す。
(非晶性ポリエステル樹脂分散液の作製)
非晶性ポリエステル樹脂A及びBを、イオン交換水80%、非晶性ポリエステル樹脂20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、加熱条件を100℃としてキャビトロンを運転し、非晶性ポリエステル樹脂A分散液及び非晶性ポリエステル樹脂B分散液(固形分濃度:20%)をそれぞれ得た。
(ポリオレフィン樹脂分散液の作製)
100部のポリオレフィン樹脂D1を、トルエン200部及びイソプロピルアルコール100部の混合溶媒に溶解させてポリオレフィン樹脂D1溶液を得た。
室温中、調製したポリオレフィン樹脂D1溶液をプライミクス(株)製T.K.ホモミキサーにて撹拌しながら、10%アンモニア水溶液を5分間の滴下時間で14部滴下し、10分間混合した。
さらに、イオン交換水900部を毎分7部の速度で滴下し、転相させて、乳化液を得た。すぐに得られた乳化液800部とイオン交換水700部とを2Lのナスフラスコに入れ、トラップ球を介して真空制御ユニットを備えたエバポレータにセットした。
ナスフラスコを回転させながら、突沸に注意し有機溶媒を除去した後、ナスフラスコを氷冷して分散液を得た。イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるよう調製し、ポリオレフィン樹脂D1分散液を得た。
(結晶性ポリエステル分散液の作製)
80部の結晶性ポリエステルE11、及びイオン交換水720部をステンレスビーカーに入れ、100℃に加熱した。結晶性ポリエステルE11が溶融した時点で、ホモジナイザーを用いて攪拌した。次いで、アニオン性界面活性剤(固形分濃度:20%)2.0部を滴下しながら、乳化分散を行い、結晶性ポリエステルE11分散液(固形分濃度:10%)を得た。
・C.I.ピグメントブルー15:3 1000部
・アニオン界面活性剤 150部
・イオン交換水 9000部
以上を混合した後、高圧衝撃式分散機を用いて着色剤を分散した。
得られた着色剤分散液における着色剤粒子の体積分布基準の50%粒径(d50)は0.16μm、着色剤濃度は23%であった。
(ワックス分散液の作製)
・炭化水素ワックス(最大吸熱ピークのピーク温度(融点)70℃) 45部
・アニオン性界面活性剤 5部
・イオン交換水 150部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積分布基準の50%粒径(d50)が210nmであるワックス分散液(ワックス濃度:20%)を調製した。
・結晶性ポリエステルE11分散液 200部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザーで混合・分散した。これにポリ塩化アルミニウム0.15部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。その後、
・着色剤分散液 30.5部
・ワックス分散液 25部
以上を追加し、さらにポリ塩化アルミニウム0.05部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌機の回転数を調整しながら、60℃まで昇温し、60℃で15分間保持した。
その後、0.05℃/分で昇温しながら10分間ごとに、コールターマルチサイザーIII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定した。体積分布基準の50%粒径(d50)が5.0μmとなったところで、非晶性ポリエステル樹脂A分散液16.5部、非晶性ポリエステル樹脂B分散液6.0部を3分間かけて投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。
その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で96℃まで昇温し、96℃で保持した。
30分間ごとに光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、5時間目で球形化したので、1℃/分で20℃まで降温して樹脂粒子を固化させた。
その後、生成物をろ過し、イオン交換水で十分洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより、トナー粒子22を得た。
100部のトナー粒子22に対して、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0部、及びイソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)1.0部を、ヘンシェルミキサー(FM−75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s−1、回転時間10min.で混合して、トナー22を得た。得られたトナー22の示差走査熱量測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。また、TEM観察によって、トナー22は、トナー粒子の表面に非晶性ポリエステル樹脂を含有する被覆層が形成されていることを確認した。トナー物性を表3に示す。
・工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 62.7部
MnCO3 29.5部
Mg(OH)2 6.8部
SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(d50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して窒素ガスで系内を置換した。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。
次いで、30部の被覆樹脂1を、トルエン40部、メチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分濃度30質量%)を得た。
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散をおこなった。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、磁性コア粒子1及び被覆樹脂溶液1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去し、冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(d50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
92.0部の磁性キャリア1に対して、8.0部のトナー1を加え、V型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)を用い、0.5s−1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1を得た。
二成分系現像剤1の製造例において、トナー1をトナー2〜22にそれぞれ変更した以外は同様の操作を行い、二成分系現像剤2〜22を得た。
上記二成分系現像剤1を用いて、評価を行った。
画像形成装置として、キヤノン製デジタル複合機imageRUNNER ADVANCE C9075 PROを用い、定着温度、プロセススピードを自由に設定できるように改造した。この改造機のシアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、静電潜像担持体又は紙上のトナーの載り量が所望になるように現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。結果を表4に示す。
静電潜像担持体上のトナーを金属円筒管と円筒フィルターを用いて吸引捕集することにより、トナーの摩擦帯電量及びトナー載り量を算出した。
具体的には、静電潜像担持体上のトナーの摩擦帯電量及びトナー載り量は、図2に示すような、ファラデー・ケージ(Faraday−Cage)によって測定した。
軸径の異なる金属筒を同軸になるように配置した内外2重筒101、102と、内筒101内に更にトナーを取り入れるためのフィルター103を備えたファラデー・ケージ100を用いて、静電潜像担持体上のトナーをエアーで吸引する。
ファラデー・ケージ100は、内筒101と外筒102が絶縁部材104で絶縁されており、フィルター内にトナーが取り込まれるとトナーの電荷量Qによる静電誘導が生じる。この内筒の中に電荷量Qの帯電体を入れたとすると、静電誘導によりあたかも電荷量Qの金属円筒が存在するのと同様になる。この誘起された電荷量をエレクトロメーター(ケスレー6517A ケスレー社製)で測定し、内筒中のトナー質量M(kg)で電荷量Q(mC)を割ったもの(Q/M)をトナーの摩擦帯電量とした。
また、吸引した面積Sを測定することで、トナー質量Mを吸引した面積S(cm2)で除して、単位面積あたりのトナー載り量とした。
トナーは静電潜像担持体上に形成されたトナー層が中間転写体に転写される前に静電潜
像担持体の回転を止め、静電潜像担持体上のトナー像を直接、エアー吸引して測定した。
トナーの載り量(mg/cm2)=M/S
トナーの摩擦帯電量(mC/kg)=Q/M
上記画像形成装置において、高温高湿環境下(32.5℃、80%RH)で静電潜像担持体上のトナーの載り量が0.35mg/cm2となるように調整し、上記金属円筒管と円筒フィルターにより吸引捕集した。その際金属円筒管を通じてコンデンサーに蓄えられた電荷量Q、及び捕集されたトナー質量Mを測定し、単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)を計算し、静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/M(mC/kg)とした(初期評価)。
上記の評価(初期評価)を行った後に、現像器を機外に取り外し、高温高湿環境下(32.5℃、80%RH)に48時間放置した。放置後、再度現像器を機内に装着し、初期評価と同じ直流電圧VDCで静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/Mを測定した(放置後評価)。
上記の初期評価における静電潜像担持体上の単位質量当たりのQ/Mを100%とし、48時間放置後(放置後評価)の静電潜像担持体上の単位質量当たりの電荷量Q/Mの維持率(放置後評価/初期評価×100)を算出して以下の基準で判断した。
評価基準は以下の様にした。
A:維持率が90%以上 :非常に良好である
B:維持率が80%以上90%未満:良好である
C:維持率が70%以上80%未満:やや良好である
D:維持率が60%以上70%未満:本発明において許容レベル
E:維持率が60%未満 :本発明において許容できないレベル
本評価では耐久使用後の転写性を見ることでトナーの耐久性を評価した。
評価紙はCS−680(68.0g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を使用した。
本評価では、画像比率0.1%のFFh出力の帯チャートを用いて、A4用紙に10,000枚出力を行った。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
転写性の評価は0.35mg/cm2のトナーを感光ドラム上に現像し、転写工程中に本体動作をシャットダウンした。そして、感光ドラム上に残った転写残トナーをテーピングし、その濃度を測定することで行った。
転写電流設定はトナー帯電量に応じて最適な値を用いた。濃度測定はX−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X−Rite社製)を使用した。
評価基準は以下の通りである。
(なお、耐久使用前のトナーは、トナー1〜22の全てにおいてランクAである。)
A:0.08未満 :非常に良好である
B:0.08以上0.11未満:良好である
C:0.11以上0.13未満:やや良好である
D:0.13以上0.16未満:本発明において許容レベル
E:0.16以上 :本発明において許容できないレベル
紙 :CS−680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
トナーの載り量:0.08mg/cm2
評価画像 :上記A4用紙の両末端に10cm2の画像を配置
定着試験環境 :常温低湿環境:温度23℃/湿度5%RH(以下「N/L」)
上記未定着画像を作製した後、プロセススピードを450mm/secに設定し、定着温度を150℃から順に5℃ずつ上げ、耐ホットオフセット性を評価した。
手順としては、まず、定着ベルトの中心位置に無地のはがきを10枚通紙した後に、上記未定着画像を通紙した。カブリの値をホットオフセットの評価指標とした。
カブリは、リフレクトメータ(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって画出し前の評価紙の平均反射率Dr(%)と定着試験後の白地部の反射率Ds(%)を測定し、下記式を用いて算出した。
カブリ(%)=Dr(%)−Ds(%)
本実施例では、トナー粒子の表面に、紙への定着性が乏しい環状ポリオレフィン樹脂を被覆している。しかし、環状ポリオレフィン樹脂の構造によってトナー粒子に含まれるワックスとの親和性に違いがあり、定着時のワックスと環状ポリオレフィン樹脂との混ざりやすさによって、耐ホットオフセット性に差が生じた。
また、トナー粒子の製造方法によって、ワックス分散性に差が生じるため、耐ホットオフセット性に影響が生じた。
評価基準は以下の様にした。
A:0.4%未満 :非常に良好である
B:0.4%以上0.6%未満 :良好である
C:0.6%以上0.8%未満 :やや良好である
D:0.8%以上1.0%未満 :本発明において許容レベル
E:1.0%以上 :本発明において許容できないレベル
紙 :CS−680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)
紙上のトナーの載り量:1.20mg/cm2
評価画像 :上記A4用紙の中心に10cm2の画像を配置
定着試験環境 :低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)紙上のトナーの載り量が上記になるように、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーを調整した後、プロセススピードを450mm/sec、定着温度を130℃に設定し低温定着性を評価した。
画像濃度低下率の値を低温定着性の評価指標とした。
画像濃度低下率は、X−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X−Rite社製)を用い、先ず、中心部の画像濃度を測定する。次に、画像濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけてシルボン紙により定着画像を摺擦(5往復)し、画像濃度を再度測定する。そして、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を測定した。
評価基準は以下の様にした。
A:濃度低下率が1.0%未満 :非常に良好である
B:濃度低下率が1.0%以上4.0%未満:良好である
C:濃度低下率が4.0%以上7.0%未満:やや良好である
D:濃度低下率が7.0%以上10.0%未満:本発明において許容レベル
E:濃度低下率が10.0%以上 :本発明において許容できないレベル
実施例1では、帯電性、耐久性、耐オフセット性、及び低温定着性の全てにおいて、非常に良好な結果を示した。
表4に示す二成分系現像剤2〜22を用いて、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表4に示す。なお、以下、実施例2〜19は、それぞれ参考例2〜19とする。
粒子の表面近傍に移行せず、耐ホットオフセット性が若干低下した。
実施例3及び4では、実施例1と比較して、熱処理を実施しなかったため、ワックスがトナー粒子の表面近傍に移行せず、耐ホットオフセット性が若干低下した。
実施例5、6及び7では、実施例4と比較して、トナーの製造方法を乳化凝集法としたため、ワックスの分散性が低下し、耐ホットオフセット性が低下した。
実施例8では、実施例7と比較して、結晶性ポリエステルの含有量が少ないため、結晶性ポリエステルの可塑効果が小さくなり低温定着性が低下した。
実施例9では、実施例7と比較して、結晶性ポリエステルの含有量は多くなっているが、結晶性ポリエステルを構成する脂肪族ジオールの炭素数を12、脂肪族ジカルボン酸の炭素数を10に変更したため、結晶性ポリエステルの可塑効果が若干小さくなり、低温定着性が低下した。
実施例11及び12では、実施例10と比較して、結晶性ポリエステルの種類を変更し、含有量も減少したため、結晶性ポリエステルの可塑効果が小さくなり低温定着性が低下した。
実施例13では、実施例12と比較して、結晶性ポリエステルを構成する脂肪族ジオールの炭素数を4、脂肪族ジカルボン酸の炭素数を4に変更し、含有量も減少させた。また、ポリオレフィン樹脂を構成する環状オレフィンをシクロヘキサンに変更したため、結晶性ポリエステルの表面移行が僅かに進行し、耐久性が低下した。
実施例14では、実施例12と比較して、結晶性ポリエステルを構成する脂肪族ジオールの炭素数を4、脂肪族ジカルボン酸の炭素数を4に変更し、含有量も減少させた。また、ポリオレフィン樹脂を構成する環状オレフィンをシクロペンタンに、α−オレフィンを1−ドデセンに変更したため、結晶性ポリエステルのトナー粒子の表面への移行が僅かに進行し、耐久性が低下した。
実施例17では、実施例16と比較して、非晶性樹脂としてスチレンアクリル樹脂を使用したため、耐久性が低下した。
実施例18及び19では、実施例17と比較して、ワックスの種類を変更しているため、低温定着性が低下した。
比較例2では、環状ポリオレフィンの被覆層が形成されていないトナーを用いている。その結果、帯電性が本発明では許容できないレベルの結果となった。
比較例3では、トナーの主結着樹脂として環状ポリオレフィン樹脂を用い、トナー粒子の表面を非晶性ポリエステル樹脂で被覆した。また、乳化凝集法によりトナーを製造した。その結果、耐久性及び帯電性が本発明では許容できないレベルの結果となった。
Claims (9)
- 非晶性樹脂、結晶性ポリエステル、及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
該非晶性樹脂、該結晶性ポリエステル、及び該ワックスを含有する処理前トナー粒子を得る工程、及び
該処理前トナー粒子の表面に、環状ポリオレフィン樹脂粒子を静電吸着させた後、熱風処理によって該環状ポリオレフィン樹脂粒子を溶融して、表面に該環状ポリオレフィン樹脂を含有する被覆層を有するトナー粒子を得る工程、
を有し、
該被覆層は、平均層厚が0.1μm以上1.0μm以下であって、
該トナー粒子に対する該被覆層による被覆率が下式:
被覆率(%)=(層厚0.1μm以上の被覆層とトナー粒子との界面の長さ)/(トナー粒子の円周の長さ)×100
で算出されるとき、トナー1000粒子における該被覆率の平均値が90%以上である
ことを特徴とするトナーの製造方法。
- 前記非晶性樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のトナーの製造方法。
- 前記トナー粒子のX線光電子分光法による表面分析において、炭素原子に対する酸素原子の存在比率が20.0%以下である、請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂が、
エチレン及びα−オレフィンの少なくとも一方と、
環状オレフィンと
の共重合体であり、
該環状オレフィンが、ノルボルネン構造を主骨格に有する化合物である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。 - 前記結晶性ポリエステルが、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールと、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸と
の縮重合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。 - 前記トナー粒子中の前記結晶性ポリエステルの含有量が、前記トナー粒子中の前記非晶性樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上15.0質量部以下である、請求項
1〜5のいずれか1項に記載のトナーの製造方法。 - 前記熱風の温度が、100℃以上300℃以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記熱風の温度が、130℃以上170℃以下である、請求項1〜7のいずれかに記載のトナーの製造方法。
- 前記環状ポリオレフィン樹脂粒子のガラス転移温度が、65℃〜105℃である、請求項8に記載のトナーの製造方法。
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